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オンコリス Research Memo(1):テロメライシンは国内外で複数の治験が進み、新規パイプラインの開発にも着手

2020/12/3 15:11 FISCO
*15:11JST オンコリス Research Memo(1):テロメライシンは国内外で複数の治験が進み、新規パイプラインの開発にも着手 ■要約 オンコリスバイオファーマ<4588>は、腫瘍溶解ウイルスによる新規がん治療薬(テロメライシン)や新規がん検査薬(テロメスキャン)の開発を目的に2004年に設立されたバイオベンチャーである。開発品の上市実績はまだないが、2019年4月に中外製薬<4519>とテロメライシンに関する独占的ライセンス契約及び資本提携契約を締結し、テロメライシンの2022年承認申請に向けた臨床試験が進んでいる。 1. テロメライシンの開発動向 テロメライシンは、国内で導出先の中外製薬が食道がんを対象とした放射線併用療法での第2相臨床試験を進めており、先駆け審査指定制度※1を活用して2022年に販売承認申請を目指している。また、放射線化学療法による第1相臨床試験にも着手している。更に、同社が台湾・韓国で実施していた肝細胞がんを適応対象とした第1相臨床試験が終了し、今後、中外製薬が新たに抗PD-L1抗体アテゾリズマブと分子標的薬ベバシズマブを併用した第1相臨床試験も開始するようだ。本試験は、テロメライシンと抗PD-L1抗体アテゾリズマブを初めて併用する臨床試験のため、安全性評価を主目的とした第1相臨床試験となっている。なお、肝細胞がん患者に対してテロメライシン単独で投与した際の安全性は、同社による第1相臨床試験において確認されている。 一方、同社による米国での臨床試験は、新型コロナウイルス感染症の影響で当初の計画よりも全体的に遅れているものの、胃がんや食道がん、頭頸部がんなどを対象とした医師主導の第1相または第2相臨床試験が進んでいる。中外製薬とは日本・台湾における開発・製造・販売に関する再許諾権付き独占的ライセンス契約と、日本・台湾・中国・香港・マカオを除く地域での開発・製造・販売に関する独占的オプション権を付与する独占的ライセンス契約を2019年4月に締結しており、ライセンス契約の総額は500億円以上となる。また、テロメライシンの上市後は、売上高に応じたロイヤリティ収入も得られることになる。このため、現在、米国で行われている臨床試験の結果が良好であれば、中外製薬がオプション権を行使し、グループ会社である米Genentech, Inc.(以下、ジェネンテック)が開発を引き継いで進めていく可能性がある。なお、中国では導出先のハンルイ※2との契約を2020年6月に解消しており、現在、中外製薬を含めた複数の大手企業と導出に向けた協議を行っている。 ※1 先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。 ※2 江蘇恒瑞医薬股フン有限公司(ハンルイ)は中国の大手製薬メーカーで、がん治療薬ではトップ企業。 2. その他パイプラインの動向 テロメライシンよりも腫瘍殺傷効果の高い次世代テロメライシン「OBP-702」については、骨肉腫や直腸がん、すい臓がん等を対象に放射線や免疫チェックポイント阻害剤等との併用療法で開発を進めていく方針だ。既に前臨床試験をスタートしており、2021年内に米国でIND申請を行い、2022年からの臨床試験開始を目指している。また、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)治療薬として開発している「OBP-2001」についても2021年中に国内または米国で治験申請を行う予定だ。軽症~中等症患者に対する治療薬の開発を進めていく。そのほか、「OBP-601」については2020年6月に米Transposon Therapeutics, Inc. (以下、トランスポゾン社)と神経変性疾患(ALS、アルツハイマー病等)向け治療薬の開発を目的として、総額3億米ドル以上の全世界における再許諾権付き独占的ライセンス契約を締結した。早ければ2021年後半にも第1/2相臨床試験のIND申請をトランスポゾン社が行う可能性がある。がん検査薬となるテロメスキャンについては、課題であったCTC※検出時間の大幅短縮を図るべく、AI技術によるCTC自動検出ソフトウェアを2020年内に完成させ、2021年にも導出先の米Liquid Biotech USA, Inc. (以下、リキッド社)で自動検査システムの評価を開始する。結果が良好であれば同システムの導出活動をアジア等の地域で進めていく可能性を検討しているようだ。 ※CTC(血中循環腫瘍細胞)とは、原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から血中へ遊離し、血流中を循環する細胞のこと。原発腫瘍部位から遊離した後、CTCは血液内を循環し、その他の臓器を侵襲して転移性腫瘍(転移巣)を形成する。 3. 業績動向 2020年12月期の業績見通しについては、適正かつ合理的な数値の算出が困難なため会社予想を開示していない。第3四半期累計では売上高で前年同期比67.5%減の207百万円、営業損失で1,167百万円(前年同期は586百万円の損失)となった。売上高に関しては、前年第2四半期に計上した中外製薬とのライセンス契約一時金収入がなくなったことが主な減収要因となっている。当面、売上高についてはライセンス契約一時金やマイルストーン収入の有無が変動要因となる。一方、費用面では引き続き複数のパイプラインの研究開発を進めていくことから、当面は損失が続くものと予想される。2020年12月期第3四半期末の現金及び預金は2,095百万円で、今後も資金調達については適時検討していく方針だ。 ■Key Points ・テロメライシンは導出先の中外製薬が国内治験を進めるほか、米国では複数の医師主導治験が進む ・がん細胞の殺傷能力を高めた次世代テロメライシン「OBP-702」は、米国で2021年内にIND申請、2022年に臨床試験開始を目指す ・がん検査薬のテロメスキャンはAI画像認識技術を使ったCTC自動検出システムを2020年内に完成し、2021年から米国にて評価を行う予定 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
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