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ワコム Research Memo(7):中期経営計画(4ヶ年)は2年目が終了。数値目標には遅れも、戦略面で一定の成果

2020/6/9 15:07 FISCO
*15:07JST ワコム Research Memo(7):中期経営計画(4ヶ年)は2年目が終了。数値目標には遅れも、戦略面で一定の成果 ■成長戦略とその進捗 1. 中期経営計画 ワコム<6727>は2018年4月に井出信孝氏が代表取締役社長兼CEOに就任したのを機に、同年5月に新たな中期経営計画「Wacom Chapter 2」(2019年3月期〜2022年3月期)を公表し、2年目が終了した。ペン入力デバイス市場の本格拡大やそれに伴う競争激化に加え、同社が優位性を発揮してきたプロユースにおいても、デジタル技術(IoTやVR/MR、AI等)や通信環境(モバイル、クラウド、5G等)の進展等に伴ってユーザーニーズやワークフローに大きな進化が見られるようになってきた。同社はそのような環境変化に対応するため、「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」として原点に立ち返り、ペンやインクのデジタル技術で常に市場の主導権を握りながら、顧客志向の技術革新を通じて持続的な成長を目指す方向性を示している。具体的には、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド&オーシャンによる緊密な連携、3)大胆な選択と集中、の3つの全社戦略に取り組み、2022年3月期の売上高100,000百万円、営業利益10,000百万円(営業利益率10%)、親会社株主に帰属する当期純利益6,948百万円、ROE 15~20%、自己資本比率約60%を目指す内容となっている。米国の対中輸入関税引上げやコロナ禍の影響等により、中期経営計画最終年度での数値目標の達成に向けては厳しい状況となってきたが、戦略面では着実な進捗を見せており、今後の方向性にも大きな修正点はない。次の「Chapter 3」に向けて、後半2年間でどのようにポテンシャルを高めていくのか、具体的な成果を含め、長期的視野での道筋を示していくことが重要となるだろう。 2. 成長戦略とその進捗 (1) テクノロジー・リーダーシップの推進 パートナー企業とのアライアンス(協業)や技術革新への積極的な投資により、常に体験を進化させることで市場をリードしていく戦略である。特に、顧客志向(ユーザーファースト)に立った技術革新を重要な戦略テーマとしているが、例えば、複数・遠隔地のクリエイターとの共同作業や2Dと3Dを自由に行き交う新たなクリエーション体験など、新たなニーズやワークフローの進化に対応していくためにはソフトウェアとの連携は不可欠となっている。これまでもVR(仮想現実)やMR(複合現実)などの次世代技術やデジタル文具、ディスプレイ、5Gといった先端技術領域を中心にパートナー企業とのアライアンスを進めてきた。前期においても、マンガやイラスト等の制作用ソフトウェアで強みを有するセルシスとの提携(2019年10月)や、同じくクリエイティブ分野でのソフトウェア大手の米アドビ<ADBE>との提携(2019年11月)などで成果を残すことができた。また、NTTドコモ<9437>の「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」のメンバーとして5Gを使った仮想空間デザインの提案を行うなど、研究開発費への積極投資も継続実施している。 (2) アイランド&オーシャンによる緊密な連携 アイランド(島事業=ブランド事業)とオーシャン(海事業=テクノロジー事業)の連携により、それぞれの特性を組み合わせて成長を加速する方向性である。すなわち、「ブランド製品事業」においては、既述のとおり、顧客志向に立った新たな体験を提供するための技術革新に取り組むとともに、「テクノロジーソリューション事業」においては、独自技術のデファクトスタンダードを推進することで、規模拡大を優位に進めていく戦略と言える。OSの壁を越えてデジタルペン技術(EMR方式、アクティブES方式)のデファクトスタンダードを推進した結果、メーカー各社からは高い評価を得ており、次世代向けのプロジェクト数も順調に伸びている。 (3) 大胆な選択と集中 市場変化に対応した製品ポートフォリオへの組み替えを進めるとともに、販管費の最適化により収益性の向上にも取り組んでいく方針である。2019年1月に販売開始した「ディスプレイ製品」のエントリーモデルを軌道に乗せ、プロと一般ユーザーの中間にあるユーザー層(フリーランスやデザインを学ぶ学生など)を取り込むことに成功しつつある。また、販管費の最適化についても、持続的な成長に向けて研究開発費は高い水準を維持する一方、それ以外の費用については可能な限り効率化を図っており、メリハリのある資金配分を行っている。販管費率も目標とする27%にあと一歩のところまで近づくことができた。 3. 今後の方向性(Chapter 3に向けて) デジタル技術や通信環境の進化は加速しており、それに伴って、デジタルペン・インクのポテンシャルにも大きな可能性が拡がっている。同社では、教育のデジタル変革(AIを活用した個別最適化教育等)、新しい働き方(リモート・オンラインコラボ)、コンテンツ需要拡大(アプリとデバイスの拡大)、クリエイティブワークフローの進化(3D化、クラウド化)、新しいPen体験(フォルダブル※、大画面、スマートホーム等)などを見据えた活動を進めていく。また、「道具」提供から「描く/書く体験」提供へと提供価値を再定義するとともに、ハードとサービスを組み合わせたビジネスにも取り組んでいく方針である。同社は将来に向けて以下の2つの戦略軸を掲げている。 ※折りたたみ可能なスマートフォンのこと。 (1) ブランドビジネス戦略 「ディスプレイ製品」を中心として、初心者でもクリエイティブユーザー志向の強いユーザーからプロまでをカバーしていく製品ポートフォリオに組み替えていく。また、新しいクリエーション体験としてXR描画※の開発を推進するほか、コミュニティの開拓やサポート強化を通じて、サブスクリプション(サービス課金型)の新しいビジネスモデルにも挑戦していく。また、サイン認証ソリューションの法人向け市場開拓にも取り組む。 ※XR(X Reality)のXとは「未知数」を示すもの。すなわち、VR(仮想現実)、MR(複合現実)などの総称を言う。 (2) テクノロジービジネス戦略 デジタル化の進む教育市場での新規開拓をパートナーとの協業を通じて強化する。特に、部品とサービスの組み合わせによるビジネスモデルの開発を進めるとともに、フォルダブルや大型デジタルホワイトボード、デジタルノート等、付加価値型案件の獲得にも取り組む。また、「ワコム標準ペンコミュニティー」の構築などを通じて、デファクトスタンダードの技術ポジションを強化していく。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫) 《EY》
関連銘柄 2件
6727 東証プライム
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時価総額 100,209百万円
描画用ペンタブレットで世界首位。韓国サムスン社など向け電子ペンOEMも。24.3期3Q累計は自社ブランド品の需要が戻らず。だがOEMが回復。経費削減や円安なども寄与して増収増益に。営業外に為替差益を計上。 記:2024/04/11
9437 東証1部
3,880
12/24 15:00
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時価総額 12,527,081百万円
NTTグループの中核を担う国内最大の携帯キャリア。金融・決済など非通信領域の強化に力注ぐ。21.3期1Qはコロナ禍で国際ローミング急減。だが非通信領域の拡大などで補う。通期では利益反発・連続増配を見込む。 記:2020/09/03