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超インフレ加速のアルゼンチン【フィスコ・コラム】

2023/9/3 9:00 FISCO
*09:00JST 超インフレ加速のアルゼンチン【フィスコ・コラム】 アルゼンチンのインフレ率が今年に入って100%を超え、さらに加速する勢いです。通貨ペソは急落して過去最安値を更新し、スパイラルに陥っています。10月の大統領選の結果次第で経済はさらに混迷を深めるとみられ、今後のリスク要因として注目されそうです。 アルゼンチンのインフレは深刻さを増しています。消費者物価指数(CPI)は今年2月に前年比+100%を超え、直近の7月は+113%に達しました。インフレはさらに加速する見通しで、米銀は今年末には+190%台になると予想しています。ペソは年初に1ドル=180ペソでしたが、足元は350ペソとほぼ半分に減価。非公式レートはさらに2分の1程度とみられ、実際には約700ペソで取引されているといわれています。 同国の1-3月期国内総生産(GDP)は前年比+1.3%にとどまりました。歴史的な干ばつで農業生産がダメージを受け、コロナ禍後の回復過程では最低の伸びを記録。それでもアルゼンチン中央銀行の為替介入によるペソの下支えが間接的に需要を刺激する効果により、プラス成長を維持したようです。ただ、4-6月期は干ばつによる打撃が全体に波及するとみられ、当面はマイナス成長が続くと予想されています。 ペソ安による輸入物価の高騰はインフレに拍車をかけています。また、国際通貨基金(IMF)は8月23日にアルゼンチン向けの75億ドル(1.1兆円)の金融支援を承認していますが、持続的なペソ安で債務はさらに膨みました。こうした事態を受け、アルゼンチン中銀はペソの対ドル相場を約18%切り下げ、同時に政策金利を21%引き上げて118%とする政策を決定しましたが、効果は限定的です。 足元でペソが急落したのは政治情勢に不透明感が広がったためです。10月の大統領選・議会選に先立ち8月13日に行われた予備選で、極右の経済学者、ハビエル・ミレイ氏が想定外のトップに躍進。事前の予想では中道右派の野党連合と左派の与党連合の勝利が見込まれていました。しかし、記録的なインフレ率と貧困率の上昇から既存政党への批判票が極右候補に集中したと指摘されています。 ミレイ氏は中央銀行の廃止とドル化を公約に掲げ、トランプ前米大統領を想起させる大胆なスタイルで有権者にアピールしています。ただ、そのミレイ氏が大統領に就任した際の政策運営については専門家でも予測が困難とされ、政治による経済の混乱は避けられない見通しです。IMFの支援により外貨準備の懸念はいったん収束しているものの、先行きはなお不安視されそうです。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》