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コラム:自民党の「新鮮味」

2021/10/3 9:00 FISCO
*09:00JST コラム:自民党の「新鮮味」 自民党総裁選で女性の候補者数が男性と同じになったのは、1955年の結党以来初めてのこと。9月29日の投票で敗れはしたものの、高市早苗氏と野田聖子氏の選挙戦での言動は、予想外の新鮮味を与えたのではないでしょうか。 自民党の総裁選は、相変わらず世襲議員による「家」どうしの争い、あるいは派閥の論理を優先した戦いになりがちです。今回は早い段階から有力視されていた岸田文雄氏と河野太郎氏による選挙戦に、高市、野田両氏が参戦。女性の出馬は2008年の小池百合子氏(現東京都知事)以来2回目ですが、候補者が男性と女性で同数になったことは、66年の歴史で他に例がありません。 選挙戦で、高市氏は推薦人の意向を受けた右派寄りの姿勢が批判される場面もありましたが、思想の是非は別として自身の政治信条をわかりやすく主張していたのが印象的でした。野田氏についても、支持率は低迷していたものの、世相に媚びることなく夫婦別姓などの持論を逃げもせず訴えていました。記者会見などで挑発的な質問を受けても、それに動じない胆力をアピールできたと思われます。 自民党の戦略として、女性2候補が目立つことにより世襲や派閥への批判を逸らそうとの狙いがあったのだとすれば、大当たりと言えます。党員票と議員票の結果、決選投票で岸田氏が選出され、国会で指名を受けた後に政権を発足させることになりました。今後、任期満了に伴う衆議院解散・総選挙に臨みます。高市氏が就任した政調会長ポストは政策立案の要でもあり、野党トップらの影は薄くなる一方です。 ドイツでは初の女性首相、メルケル氏が近く退陣する予定です。後任を決める選挙として注目された9月26日の議会選は、与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が議席を減らし、中道左派の社会民主党(SPD)が第1党に。大躍進の緑の党は女性党首のベーアボック氏が支持を広げ、政権入りを狙っています。男性主体の政治への回帰を嫌う有権者の意思が感じ取れる結果です。 アイスランドでは、リーマンショックの際の財政破たんは生活に密着していない男性主体の政治に原因があるとし、それをきっかけに女性の政界進出が活発化。今では議会の半数近くを占めるまでになりました。他に女性議員の多いキューバやメキシコ、アラブ首長国連邦(UAE)などの国々は、投票率が比較的高いことでも知られています。有権者の関心の高さと女性の政界進出は、決して無関係ではありません。 男女平等の意識が世界的に低いと指摘される日本において、今回の自民党総裁選は典型的な男社会に風穴を開けたという点である意味模範を示しました。しかし、だからといって来る総選挙で大勝するとは限りません。「生まれ変わった自民党」(岸田氏)をまずは人事でアピールできなければ、野党を勢いづかせることになるでしょう。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》