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北朝鮮が弾道弾を発射、元統合幕僚長の岩崎氏「我が国周辺のみならず米国への脅威にも」

2019/10/4 15:30 FISCO
*15:30JST 北朝鮮が弾道弾を発射、元統合幕僚長の岩崎氏「我が国周辺のみならず米国への脅威にも」 日本政府から「北朝鮮が10月2日07時11分頃、北朝鮮東部の元山沖付近から日本海のほぼ中心に向け弾道弾と思われるミサイルが発射され、07時27分頃に日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した」との報道がなされた。 北朝鮮のミサイルのEEZへの落下は2017年11月以来であり、ミサイル発射は本年9月10日以来である。今回のミサイルはどのようなものなのかは、日米の政府や韓国が分析中であり確たることは言えない段階であるものの、現時点での私のコメント3点を述べたい。 第一に今回は潜水艦からの発射とか水中の発射台からの発射などと報じられている。いずれにしても地上ではない様である。北朝鮮はこれまで、潜水艦からのミサイル発射を2015年5月に「北極星」、2016年8月に「北極星2」と行い、これらの発射は成功したと自らが報道している。これらの事から、私は、我が国としては北朝鮮が既に潜水艦からの弾道ミサイル(SLBM)の発射能力を保有していると考え対応すべきと考えている。 また、今回の飛翔形態は、高度を高く飛ぶ所謂「ロフテッド軌道」と呼ばれる飛翔形態との報道がなされている。今回の飛翔軌道の最高高度は約900km, 飛翔距離は約450kmとの事である。一般的には、この様なミサイルを最大飛距離で飛ばそうとすれば、最高高度の約3倍程度飛翔させることが出来ると言われている。であれば、今回のミサイルは2,500-3,000km飛翔可能と推測される。これまでの「北極星」と「北極星2」の飛翔可能距離は約1,000km程度と考えられていた。これまでの北極星を改良したのか、全く別のミサイル実験だったのかわらない。ただ、この飛翔能力があれば、北朝鮮の沿岸からグアムまでこそ到達できないものの、日本の全領域に発射可能である。また、潜水艦からの発射は事前の予測が極めて困難であり、射程も含めて我が国にとって深刻な脅威であると考える。さらに、潜水艦は極秘裏に移動可能な事から、我が国周辺のみならず米国への脅威にもなり得る。 次に今回の落下地点が我が国のEEZ内である事は誠に遺憾である。EEZは当に排他的な水域である。そこに勝手に物を落下させることは決して許されることではない。私は、公海上であれば容認するという訳ではない。もしこの落下点にいる漁船や艦船、又は飛行中の航空機への危害が起これば大変な事である。そもそも今回の弾道弾発射の国連決議違反は明確である。日本や米国・韓国だけでなく国連・全世界で対応すべき事象である。 そして第三に今回のミサイル発射に関連し、もう1点指摘しておきたい。それはGSOMIAに関してである。韓国は本年8月22日、日韓軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄を閣議決定した。この事により、韓国は本年8月24日までに日韓GSOMIAの延長手続きをしなかったため、本年11月22日で情報共有の期限が切れることになっている。今回の北朝鮮のミサイル発射に関し韓国の鄭国防大臣が我が国に対しGSOMIAに基づく情報提供を求めたのである。そして防衛省はこれに応じたようである。日韓関係の現状を踏まえれば大変複雑な思いであるが、私は今回の韓国の要請と防衛省の対応を肯定的に考えている。韓国の今回の要請は、韓国軍は引き続き日韓GSOMIAの有効性・重要性を認識しているようにも見えるし、日韓GSOMIAが11月22日まで有効であるなら、最後まで必要な情報を日本から提供させようとの考えとも受け取られる。どちらかは分からないし、今更ながら元には戻り難いとは思うものの、日韓の安全保障上の協力は両国のみならず東アジアの平和・安定にとって極めて重要であることから、今回を契機に日韓GSOMIAについて、韓国側が是非再考する事を切に望んでいる。(2019.10.03) 岩崎茂(いわさき・しげる) 1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。 《SI》