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資本戦争ー破滅兵器のボタン(2)【中国問題グローバル研究所】
2019/9/10 16:14
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*16:14JST 資本戦争ー破滅兵器のボタン(2)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信している「資本戦争ー破滅兵器のボタン(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。 ——— 米国など世界の投資家は、3つの主要な経路を通じて中国株に投資する方法がある。 第1は、米国およびその他の中国本土以外の地域で上場している中国企業への投資である。 最も顕著なのは香港市場で、中国の大手国有企業はすべてここに上場している。 次に、適格外国機関投資家(QFII)と人民元適格外国機関投資家(R-QFII)のプログラムを通じたルートで、大手機関投資家は国内A株市場に直接投資できる。 米国企業は、このスキームを通じ、これまでに約150億米ドルの投資資金を振り向けている。 最も新しいルートは、「チャイナ・コネクト」を通じた投資である。これは香港取引所の取引インフラを経由して上場A株の約半分に投資できる革新的な仕組みだ。 緊張が高まる中で、こうした経路すべてを通じた米国資金の中国企業への流入を米国政府が制限しようとすることは十分考えられる。 制限は、連邦レベル、個別の州レベル、特定の企業に対する制裁、あるいは実質的包括規制など様々な形があり得る。 皮肉なことに、中国銘柄が米国の一連のMSCIインデックスに組み入れられるようになったのは、チャイナ・コネクトの開設や、中国国内市場の本格的な開放があったからだ。 連邦退職貯蓄投資理事会が投資運用を連動させようとしているのがまさにこのインデックスである。 ルビオ氏は実際MSCIに対し、情報開示の質の低さや共産党とのつながりにもかかわらず、中国企業をなぜインデックスに組み入れたのか問いただした。 米国の資金が中国株に流入するのを本気で制限しようとすれば、株価に劇的な影響を与えるだろう。 MSCIインデックスの構成銘柄から中国株が除外されれば、数十億ドルの資金が流出し、あらゆる投資家が中国株の全面的な投げ売りに出るだろう。 このような制限はかつて有り得ないと思われた。しかし、石炭企業やたばこ企業の株が倫理上および健康上の懸念を理由に、一部の投資家グループの支持を失ったのと同じように、新疆や香港を巡る懸念や米国の法規制に対応して、ファンドが中国への投資を制限する可能性は十分にあり得る。 米国には、財務省外国資産管理局を通じて特定の投資を制限するメカニズムがすでに存在する。 これは一部のロシア資産を標的に活用された。米ブルームバーグ社が、米国の規制に抵触することを恐れて、香港上場のロシア企業ルサールの株価の公表を拒否した事例もある。 米国がこのような行動を取った場合の結果は極めて甚大で、影響は何年にもわたるだろう。 米国企業は銀行もブローカーも投資家も、程度の差はあれ20年間にわたって中国の金融市場に参入しようとロビー活動を展開してきた。 米国に上場している最大規模の中国企業のひとつであるペトロチャイナは、モルガン・スタンレーとの合弁証券CICC(中国国際金融)とゴールドマン・サックスを引受主幹事に上場を果たした。 ウォール街は今日の全米レベルの国営企業の構築に一役買ったのだ。 中国が開放を始めたこのタイミングで、JPモルガンや、ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ、モルガン・スタンレーといった米国の有力企業に対し、中国での取引や投資を米国政府が事実上禁止することを考えるのは、全く筋が通らない。 トランプ大統領が米国企業に対して、中国に代わる選択肢を見つけるよう「命じた」のは、つい数週間前のことだ。 しかし、トランプ大統領の考えには中国市場に対する時代遅れの見方が反映されている。 中国は安価な労働力があるだけでなく、世界第2位の経済大国であり、米国のすべての大企業や多国籍企業の売上と収益の源泉でもあるのだ。 米国企業は中国に対する不満を声高に表明するようになり、実際、非常に困難で時に敵対的な市場で事業を展開しなければならない。しかし、世界最大の自動車市場である中国からの撤退を望む米国の自動車メーカーは存在しない。 アップルは生産拠点を中国から移すかもしれないが、それでも中国の消費者にiPhoneを販売したいと考えている。 資本の流れを制限することは、その結果を考えると、まさしく核兵器という選択肢と同じに見える。 中国が報復として保有する米国債の売却を始めるのはほぼ確実であり、何らかの形で貿易協定に合意しようとしてきたそれまでの態度を完全に翻すだろう。 しかし、中国の資産の一部を選択して狙いを定めることは避けられないかもしれない。 中国人民解放軍と関係のある企業や重大な人権侵害に関与している企業に資金提供する米国拠点の資本に対して、米国政府がなぜ制裁を課すのか。 連邦政府によって安全保障上のリスクとみなされた企業が、なぜ同時に州または連邦の年金基金から資金を調達できるのか。 単純な答えは存在しない。問題の複雑さは、過去20年間にわたる経済開放によって、米国と中国がかつてないほど密接に絡み合っていることを示している。 ルビオ氏の法案は合理的で公正なものに思われる。 上場企業を共通の基準に準拠させることは理にかなっており、長い間待ち望まれていたことである。 特定の企業や分野に限定した特別の一貫性のある規制は正当化されるかもしれない。しかし、米中関係の将来が完全な拒絶と忌避でない限りは、開放されたばかりの世界第2位の株式市場に完全に背を向けることは正当化できない。 まだ中国で相応の事業を展開していないグローバル企業があるだろうか。 オーストラリアのコモディティー企業やフォルクスワーゲンが中国に大きく依存しているからといって、これらの企業向けの米国資金を制限すべきだろうか。 資本戦争はまだ始まったばかりだ。 ルビオ上院議員は、中国の影響力や企業への反攻の最前線に立つ中心的な存在である。 彼の役割は資本戦争の戦線を開くとともに、香港の抗議活動へのより強い支持を呼び掛けることだ。 現在のところ、資本戦争は一貫した戦略とはほど遠く、むしろ関連性はあってもそれぞれ別個の動きの連続であり、明確な最終ゴールもない。 中国に対する課題は大豆、白物家電、通信だけだと思っているなら、それは間違っている。 投資信託、年金基金、または401kプランに託された一人ひとりのドル資金が舞台の真ん中に躍り出ようとしているのだ。 ※1:中国問題グローバル研究所 https://grici.or.jp/ (この評論は9月1日に執筆) 《SI》
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