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「適温」期待に忍び寄るリスク

2021/6/15 12:22 FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)] 日経平均;29375.94;+214.14TOPIX;1969.17;+9.42 [後場の投資戦略]  米ハイテク株高を受けて投資家心理が上向き、本日の日経平均は取引時間中としてはおよそ1カ月ぶりの高値を付けた。日足チャートを見ると、これまで上値抵抗となってきた75日移動平均線を上抜け。6月に入ってからの米長期金利の低下で、国内外投資家のエクスポージャー(投資残高)が大きい米ハイテク株の上昇にサポートされる形で日経平均がもち合い上抜けすることもある程度想定されたが、やはりFOMC前というタイミングには意外感があると言わざるを得ない。  前日も大方の予想以上に日経平均が堅調な動きを見せたが、中国・香港・台湾等の市場が休場だったこともあり、東証1部売買代金は1兆9646億円と1月18日以来の低水準。それ以上に株価指数先物の取引は閑散とした印象で、日経平均の値幅の割に目立った買い越しの動きは見られなかった。強いて言えばモルガン・スタンレーMUFG証券が東証株価指数(TOPIX)先物の売り越しを継続。相変わらず海外勢によるTOPIX先物の買い戻しの動きは出てきておらず、値がさグロース(成長)株を中心とした現物株の買いが相場を押し上げたことがわかる。  一方、米債券市場の動向を見ると、確かに長期金利はなお1.5%を下回る水準で推移しているものの、ここ2営業日は反発している。4日発表の5月雇用統計を受け、「労働需給のギャップは徐々に解消される」との見方から期待インフレ率の指標(米10年物ブレークイーブン・インフレ率)や長期金利が低下傾向にあったのはこれまで当欄で指摘してきたとおり。しかし、FOMCを前に米金融大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)がインフレの高まりや金利上昇を予想していることを示唆。また、米ウォール・ストリート・ジャーナルは米連邦準備理事会(FRB)が今回のFOMC後に早期利上げの可能性を示唆する可能性があるなどと報じており、債券投資家が持ち高調整の動きに出たのだろう。  このように、金融緩和が続くことを前提にしたようなグロース・ハイテク株主導の上昇という日米株式市場の動きと、FOMCを前にこれまでの金利低下の反動が見られる米債券市場の動きは相反するものに見受けられる。ダイモン氏の発言やWSJ紙の報道を踏まえると、株式投資家も「長期金利の低位安定」という居心地のいい環境がどこまで続くか、慎重に見極める必要がありそうだ。  さらに言えば、現在の株高は“緩やかな経済成長と緩和的な金融環境が継続する”という、いわゆる「ゴルディロックス(適温)相場」への期待に支えられたものだろうが、リスクの萌芽は米金利動向のみにあるわけではない。FOMCに関心が向かいがちだが、本日は米国で5月小売売上高や鉱工業生産の発表が予定されている。特に小売売上高は給付金効果の一巡でさえない結果になるとの見方があり、現地からは住宅価格の高騰で消費者のセンチメントが大きく悪化しているとの声も聞かれる。株式投資家の期待するシナリオは思いのほか狭い道かもしれない。短期的な波乱にも十分警戒したうえで取り組みたい。(小林大純) 《AK》