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パウエル講演は大きな変化だったか?

2020/8/28 12:38 FISCO
[日経平均株価・TOPIX(表)] 日経平均;23292.80;+83.94TOPIX;1629.66;+13.77 [後場の投資戦略]  パウエル議長講演では新しい政策指針が示され、低金利の長期化観測がインフレ期待の高まりとともに長期金利の上昇と景気敏感株の買いにつながった。日経平均は安倍首相の健康問題を不安視する向きもあって一進一退となっているが、物色の方向感としては景気敏感系のバリュー(割安)株買い、「ウィズコロナ」下で期待されたグロース株売りが鮮明だ。時価総額上位の自動車株や金融株が強いことから、前引け時点の上昇率は日経平均の0.36%に対し、東証株価指数(TOPIX)が0.85%と優位。マザーズ市場でも主力の新興ハイテク株を中心に売りが出て、マザーズ指数が2%近い下落となっている。  ただ、今回のパウエル議長講演が金融市場のトレンドを大きく変える内容だったかと言われると疑問だ。一昨日の当欄で「金融市場は緩和長期化を既に先取りし、米ハイテク株などに資金流入してきたため、講演後に材料出尽くし的な動きが広がる可能性がある」と指摘したが、まさにこうした短期的なリバーサル(株価の反転)に過ぎないとも考えておく必要があるのではないか。  インフレ期待につながる要素としては「パウエル議長がインフレ目標達成を堅持する姿勢を示した」こと、また長期金利の上昇につながる要素としては「日銀のような長期金利の抑制策に言及しなかった(かねてFRBは長期金利の上昇をある程度容認しているとみられており、金利曲線の平たん化に伴う金融機関へのダメージを懸念していると考えられる)」ことが挙げられるだろう。しかし、先進国に共通する「潜在成長率の低下」に「コロナ禍」が加わり、インフレ目標達成の時期は見通しづらい。達成に向けた決定的な施策が示されたわけでもなく、現行のゼロ金利と量的緩和の出口が見通せなければ、長期金利にも低下圧力がかかるのではないだろうか。  本日ここまでの東証1部売買代金は1兆円をやや上回る程度。安倍首相会見を前に様子見ムードといっても、米金融政策の枠組みが大きく変わったと受け止められているような売買の膨らみ方ではない。結局のところ、以前当欄で指摘したとおり、人類が新型コロナを克服する決定的な材料が出てこない限り、資産クラス間での資金ローテーションが続くだけだとも考えられる。  安倍首相会見を巡っては様々な報道が出てきているが、「ポスト安倍」などを巡り情報戦の様相も呈しつつあるため、まずは会見内容を見極めたいところだ。(小林大純) 《AK》