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第20回党大会 習近平はなぜ三期目を目指すのか(2)【中国問題グローバル研究所】

2022/9/13 10:26 FISCO
*10:26JST 第20回党大会 習近平はなぜ三期目を目指すのか(2)【中国問題グローバル研究所】 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページ(※1)でも配信している「第20回党大会 習近平はなぜ三期目を目指すのか(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。 ◆アメリカに潰されるわけにはいかないという中国の危機感 二つ目は習近平の内的要因ではなく、アメリカに潰されるわけにはいかないという危機感が習近平を三期目へと追いやっているという外的要因があるということだ。 あと数年で中国経済がアメリカ経済を追い越そうとしている。 そうはさせまいと、アメリカは半導体などを中心として中国への制裁を強化し、最近ではたとえば「半導体支援法」に関し、「資金を受けている企業は今後10年間、中国国内で先端工程施設を建設することはできない」という付帯条件を設けたり、またIPEF(インド太平洋経済枠組)により中国を排除しようと必死だ。 一方、台湾が独立を宣言しない限り、中国は平和統一しか考えていない。武力統一などをしたら台湾に強烈な反中分子を生んでしまい、統一後、共産党による一党支配体制が危うくなるからだ。 しかし平和統一だと中国経済は益々成長するので、アメリカはそれを潰すために何とか中国が台湾を武力攻撃してくれるように米政府高官を訪台させたりして中国と国際世論を煽っている。 米中覇権競争の真っただ中にたまたま差し掛かってしまった中国のトップ・リーダーとして、習近平以上に「紅い革命のDNA」を引き継いだ強力なリーダーはいない。今そのリーダーを交代させるわけにはいかないという切羽詰まった事情が中国にはある。 ◆習近平以外ではダメなのか? 他の人物ではアメリカに勝てないのかという見方もあるだろう。 皆無ではないが、習近平ほどの「紅い革命のDNA」を直系で持っている人間はいない。習近平が中国共産党の「初心」と「延安」を強調するのは、父・習仲勲が延安を中心とする西北革命根拠地で1935年に毛沢東を助けたからだが、もう一つ、毛沢東思想にこだわるのは、どの指導者も「第二のゴルバチョフになってはならない」という思いがあるということを見逃してはならない(参照:9月5日のコラム<中国共産党「第二のゴルバチョフにだけはなるな!」>(※2))。 アメリカの(甘い)話に乗っかれば、ソ連が崩壊したように、共産中国も崩壊する。 崩壊させてなるものかと、習近平はつぎつぎと手を打っている。 たとえば、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』(※3)の第二章の五(中国に対してSWIFT制裁はできない——なぜなら世界貿易を支配しているのは中国だから)に書いたように、世界190ヵ国のうち128ヵ国が中国を最大貿易国としている。その128ヵ国のうち90ヵ国がアメリカの2倍以上の貿易を中国と行っている。 また9月1日のコラム<米中貿易データから見える「アメリカが常に戦争を仕掛けていないと困るわけ」>(※4)で書いたように、中国は製造業において圧倒的優位に立っており、また国際エネルギー機関(IEA)によると、中国は太陽光パネルのすべての主要製造段階で80%以上の市場シェアを占めているとのこと。 加えて、今年9月7日に習近平は「全面深化改革委員会」第27回会議を開催して「核心的技術を向上させるべく新型挙国体制で取り組め」(※5)という指示を出し、「社会主義体制の特徴を発揮して力を集中させ、国家事業として科学技術のイノベーションを促進し科学技術のレベルアップを国家戦略の主戦場とせよ」と強調している。 アメリカは中国政府が市場に介入してくることを自由競争への挑戦だとして非難してきたが、アメリカ自身が半導体分野などに国家が介入し、他国(中国など)への制裁も含めて国家事業として特定分野の産業への支援をしているので、「国策」として動いているのは米中どっちもどっちという感はぬぐえない。 その際、自由な発想だけが産業競争力を高めるのかというと、必ずしもそうではない。ひところアメリカのシリコンバレーが栄えた時代とは異なり、現在は次の段階に入っていて、他国への制裁という排除理論で国際関係を築いているバイデン政権よりも、「人類運命共同体」を外交スローガンとする習近平政権の方が、より多くの発展途上国の賛同を得ている。 たとえばアフリカ諸国はロシア制裁に加わっておらず、むしろ習近平政権と利害を一致させているし、アメリカの裏庭である中南米においても中国の存在感が増している(※6)。 西側からは「強硬路線」と批判されても、こういった強烈なリーダーシップを発揮する人物が、いま中国にいないとアメリカに呑み込まれ、第二のゴルバチョフになり兼ねないのである。 日本の中国研究者は権力闘争と言いたがるが、そんな視点を持っていたら、中国政治の現在と未来を見誤るだろう。 なお、「チャイナ・ナイン」の時は江沢民が胡錦涛政権に刺客を送り込み、激しい権力闘争が行われていた。しかし「チャイナ・セブン」になった習近平体制では、権力闘争をする対等な相手はおらず、胡錦涛と習近平は腐敗撲滅運動に関して徹底して協力している(2012年の第18回党大会で、二人とも「腐敗を撲滅させなければ党が滅び国が亡ぶ」と誓い合っている)。 腐敗を撲滅させる目的は、腐敗の巣窟と化した軍の腐敗体制に斬り込み、軍のハイテク化を図ることによって「強軍の夢」を実現させるためであり、「中国製造2025」というハイテク国家戦略を実行することによって、アメリカに勝つことが目的だ。 それを見誤ると日本の国益を損ねる。注意を喚起したい。 写真: ロイター/アフロ (※1)https://grici.or.jp/ (※2)https://grici.or.jp/3573 (※3)https://www.amazon.co.jp/dp/4569852327/ (※4)https://grici.or.jp/3556 (※5)http://politics.people.com.cn/n1/2022/0907/c1024-32520882.html (※6)https://toyokeizai.net/articles/-/616226 《FA》