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ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地(2)【中国問題グローバル研究所】
2022/1/4 11:02
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*11:02JST ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地(2)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、「ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。 ◆習近平は馬興瑞に「新疆デジタル経済と太陽光パネル基地」建設を期待 アメリカからの制裁を受ける中、習近平は新疆ウイグル自治区を経済発展させることによってアメリカの対中非難に勝とうとしていると推測される。 それもハイテク国家戦略「中国製造2025」に沿ったもので、深センが「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長したのと同じように、馬興瑞の実力を頼りに、新疆ウイグル自治区を「デジタル経済」と「太陽光パネル生産」の基地として発展させようと狙っていると思われるのである。 そうでなくとも中国は国土面積が広く、1990年代から遠隔教育を推進させていた。雲南省にいても新疆ウイグル自治区にいても、北京や上海の大学で行っている講義をリモートで聞くことが出来るシステムを、世界銀行などの支援を得て構築していたし、時にはスタンフォード大学の講義を中国で聞くこともできるシステムさえ進めていた。 ネット通信が発達し、特にコロナによりリモート勤務が世界的に進んだ今、中国におけるデジタル経済のニーズは増している。 デジタル社会を可能ならしめるには、大量の電力が必要になる。 その電力もクリーンエネルギーが奨励される中で、太陽光パネルは願ってもない手段だ。 中国には「西気東輸」とか「西電東送」といった言葉があるが、これは西部大開発において1990年代から唱えられ、2000年前後に始まった、「西部にある石油や天然ガスなどのエネルギー源や電力を、経済発展著しい東沿海部の都市に運ぶ」という中国全土を覆ったネットワークである。これによって電力不足を補い、停電などによって生産ラインが止まるのを防いでいた。特に「西気東輸」の起点は新疆ウイグル自治区にあるタリム盆地だ。 クリーンエネルギーが叫ばれる今、新疆ではレアアースが埋蔵しているだけでなく、太陽光パネルが生み出す、有り余る電力を、「西気東輸」や「西電東送」の考え方と同じように中国全土の電力補給に使っていこうという戦略が、このたびの新疆ウイグル自治区トップ交代の意味である。 アメリカが新疆にある太陽光パネル企業に下した制裁は、「アメリカへの輸出を禁じる」という内容だ。習近平としては、アメリカに輸出できないというのは大きな痛手ではなく、むしろ中国国内における電力不足からくる社会不安を緩和する方向に電力を振り向けていこうというのが、馬興瑞を新疆に送った事実から見えてくる国家戦略なのである。 国内で使うのに、「それは強制労働による電力だろう」という批難をアメリカから受ける可能性はゼロで、むしろウイグル族の人々がクリーンエネルギー生産に従事してデジタル経済を推進していくことになれば、世界からの批難が少なくなるだけでなく、新疆に経済的繁栄をもたらすので、テロなどイスラム教徒が起こす傾向にある反乱を和らげる働きをするだろうと、同時に計算している側面がある。 ◆「新疆‐アフガン列車」でイスラム圏アフガンの統治能力を世界に示す というのも、2021年9月8日に王毅外相がアフガニスタンの外相と話し合い、「新疆—アフガニスタン専用貨物列車」の復活を提唱したのだが(※2)、11月20日には、実際に開通したと、中国共産党の機関紙「人民日報」が報道した(※3)。アメリカはイスラム教圏であるアフガニスタンの統治に失敗したが、中国は同じくイスラム教を信じるウイグル族とアフガニスタンの経済を成長させることによって、中国の方がアメリカの統治能力を凌駕するというメッセージを発信したいものと位置付けることが出来る。 習近平は米中覇権競争を、経済で絡め取って、中国の勝利に持って行こうとしているのだ。 ただ、本来ならば2022年秋に開催される第20回党大会あたりで発表するはずの人事異動を前倒ししたのは、停電や不動産開発産業が招く社会不安を回避するだけでなく、西安政府の管理能力の欠如によるコロナ再感染を防ぐための不手際に対する中国政府への不信感を払拭する狙いもあるのではないか。 2022年に開ける新たな幕のゆくえを見逃さないようにしたい。 写真:ロイター/アフロ (※1)https://grici.or.jp/ (※2)https://www.fmprc.gov.cn/wjbzhd/202109/t20210908_9604940.shtml (※3)http://world.people.com.cn/n1/2021/1122/c1002-32287975.html 《FA》
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