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メディアがビットコイン価格に与える影響—マウントゴックスの事例【フィスコ・仮想通貨コラム】

2020/2/7 14:05 FISCO
*14:05JST メディアがビットコイン価格に与える影響—マウントゴックスの事例【フィスコ・仮想通貨コラム】 仮想通貨(暗号資産)であるビットコイン(BTC)価格は、仮想通貨関連の報道に影響される場合がある。2018年から2019年にかけてたびたび取り上げられた事例に、2009年から2013年まで日本を拠点に営業されていた仮想通貨取引所マウントゴックスによる資産保全目的のBTC売却関連の報道がある。この報道が市場に与えた影響を振り返る。 そもそもの発端となったのは2014年のマウントゴックスのビットコイン流出事件だ。同取引所は2014年2月7日に80万BTC(当時480億円)相当がハッキング被害によって流出したと発覚したことでビットコインの払い戻しを停止。この時点で債務が資産を上回っていた同取引所は民事再生法適用を申請していたが東京地裁に棄却されて資産保全命令を受け、2014年4月より破産手続きを行った。まだ国内外で仮想通貨取引所が少なかった当時マウントゴックスの出来高は世界最大規模であり、これは大きな報道となった。 この潮目がかわったのが2017年のBTC価格の高騰である。2017年1月には1BTC=約1,000ドルだったビットコインは11月末には10,000ドルに迫り、マウントゴックスが保有するBTCを現金化すれば債権者に100%配当が見込めるとして債権者が東京地裁に再度民事再生法適用を申し込むこととなった。 こうした流れの中、2018年3月に東京地裁の関連資料から、マウントゴックスの管財人が2017年9月以降2018年3月までに、約430億円相当の仮想通貨(3万5,841BTCと3万4,008BCH、BCHはビットコインキャッシュの通貨単位)を売却して現金化したことが明らかとなると、各メディアは「2018年初めからのBTC相場下落はマウントゴックスによる売りが影響したのでは」と報じるようになった。2017年には最高で20倍ほど値上がりしたBTCが2018年初頭から急速に値下がりして、3月初頭にはふたたび10,000ドル水準で取引されていたこともこの報道を後押しした。 マウントゴックスの民事再生開始は2018年6月に決定して、同9月には再び同社の2018年3月から6月までの売却額が公開された。この3カ月には、約260億円(2万4,658BTCと2万5,331BCH)が売却された。この売却期間と売却額は9月に公開されたが、各メディアは大口の売却があるたびに「マウントゴックスの売却」をリアルタイムで報じた。マウントゴックスがかつて利用したビットコイン・アドレス(BTCの送金時に利用される文字列)が一部露呈していたことで、外部から大口のBTC流出入が見られていたのだ。この期間、BTC価格は下落相場となった。 ややあって2019年2月、2018年2月~6月のマウントゴックスによる仮想通貨売却の具体的な日程がリークされる。情報サイトDoxGox.comが2019年2月にリークした東京地裁の関連記録から管財人の管理する銀行口座情報に、上述の4か月間において仮想通貨取引所ビットポイント・ジャパンから計25回:総額343億4658万1104円の振り込みがあったことが判明する。 マウントゴックスの管財人がBTCとBCHの売却を公表する「2017年9月以降2018年3月7日まで(約430億円)」と「2018年の3月7日から6月22日(約260億円)」の中でも、とくに同社の売りが集中したと推測されるのが、BitPointの入金が頻繁にあったことがみとめられる2018年2月から6月の期間だ。 管財人によって断続的に売りが実行された2017年9月~2018年2月(推定額約346.5億円)における具体的な売却日は不明のためBTC相場への影響が分析しにくいが、売却が集中した事が確認できる2018年2月~6月(推定額約343.5億円)、特に売りが集中した5月にはBTC相場の下落が確認される。これは、マウントゴックスによる仮想通貨の大口売却報道が頻出した時期を振り返ると、やはり実際の売却が集中した時期と重複する。 マウントゴックスの大口売却報道が過熱した5月、BTC相場は下落した。事実として、マウントゴックスによるBTC売却が多発した時期であったため、数々の報道は相場操縦を意図したものではなく、実際にブロックチェーン上での大口の資金移動を確認したものだったであろう。ただし、報道の多くが投資家心理に与えた影響は決して小さなものではなかったと予想される。実際にはマウントゴックスによるBTC売却は2017年9月から開始されていたが当時はまだ売却の事実は発覚しておらず、当時のBTC相場は上昇の一途を辿っていた。 もちろん仮想通貨市場に影響を与える要素は多様で、その仮想通貨の需給設定の引き締まりやソフトウェアのアップデートなどの技術関連のイベントや、地政学的な側面などさまざまだ。BTC相場においても、当然マウントゴックスの事象ひとつのみをとって相場の上下を語ることはできない。 しかし、マウントゴックス売却報道とBTC相場とは、2017年のBTC価格高騰以降に乱立状態となった仮想通貨メディアや個々人による仮想通貨関連の情報発信も相場に大きな影響を与え得るというひとつの例といえる。 参照 ■マウントゴックスの情報開示(売却金額について言及、2018年3月と2018年9月) 2018年3月報告書 http://www.mtgox.com/img/pdf/20180307_report.pdf 2018年9月報告書 https://www.mtgox.com/img/pdf/20180925_announcement_ja.pdf ■2019年2月5日 マウントゴックスのBTC売りに関して資料がリークされる (東京地裁の関連資料より、管財人の銀行口座にBitPointから25回の振り込み) 「The Dumpening: Trustee Bank Book Reveals BTC Dumped」 https://www.goxdox.com/ マウントゴックスによるビットコイン売却に関する報道の流れ(一部を抜粋) ■2018年3月7日 ※マウントゴックスのBTC・BCH売却に関する最初の報道 (同社の2018年3月公開の報告書から判明) Mt.Gox Trustee Sells $400 Million in Bitcoin, Bitcoin Cash in 6 Months https://www.ccn.com/mt-gox-trustee-sells-400-million-bitcoin-bitcoin-cash/ ■2018年4月27日 マウントゴックス管財人がビットコインとビットコインキャッシュを売却か?164億円相当のコインを送金した形跡 https://cointyo.jp/article/10003591 ■2019年5月11日 マウントゴックスのコールドウォレットから8,200 BTC(83億相当)が送金される、価格下落に影響か https://cointyo.jp/article/10003689 ■2018年5月13日 ビットコインまた暴落! 原因はマウントゴックスと韓国市場か https://bitcoin-valley.com/news/gox-upbit/ ■2018年5月18日 ビットコイン一時8000ドル割れ 1カ月ぶり https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30694120Y8A510C1EN2000/ ■2018年5月23日 マウント・ゴックス管財人からの売りはもう間もなく終了する?それとも全て処分する? https://cc.minkabu.jp/column/427 ■2018年6月5日 マウントゴックスのウォレットからビットコイン流出か http://www.morningstar.co.jp/msnews_spn/news?rncNo=1849202&newsType=fx_bond ■2019年2月5日 マウントゴックスのBTC売りに関して資料がリークされる ) 「The Dumpening: Trustee Bank Book Reveals BTC Dumped」 https://www.goxdox.com/ 《SI》