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カンロ Research Memo(7):「Kanro Vision 2030」を策定(2)

2024/8/29 13:17 FISCO
*13:17JST カンロ Research Memo(7):「Kanro Vision 2030」を策定(2) ■成長戦略 3. 具体的な取り組み カンロ<2216>はブランド価値の向上と市場シェア・利益の最大化に向け、総合的な戦略を展開する。その核心には、「ブランド基軸経営と顧客起点」があり、これにより主力ブランドのシェア拡大を目指す。同時に、デジタル媒体を活用した店頭起点の営業活動を強化し、消費者へのアプローチを効率的かつ効果的に行う予定だ。生産体制の整備も重要な柱の1つである。具体的には、2024年10月より松本工場のグミ棟を拡張し、これにより年間の全社グミ生産能力を14%増加させる予定である。さらに、人員の増強と自動化・省人化を推進し、生産効率を向上させる。これに加えて、さらなるグミ増産の可能性も検討している。コスト上昇への対応策としては、生産性の向上を図りコスト増を吸収し、原材料価格やエネルギー・物流費の上昇に対応する。これには、SKU(在庫保有単位)の絞り込みも含まれる。また、適正な利益を確保するために価格改定や内容量の変更も実施する。 (1) コア事業 コア事業においては、若い消費者層であるZ世代と密接に連携し、新しいキャンディの開発を進めた。この取り組みは「Z世代飴の原体験共創プロジェクト」と名付けられ、2022年8月にスタートした。社内の座談会や現役高校生との議論を重ね、高校生を製品開発の中心に据えて、新しいキャンディ「透明なハートで生きたい」を創り上げた。このキャンディは、特に10代のユーザーが自己反映し、感情的な安らぎを得られるようデザインされている。2023年5月には、この新製品をコンビニや駅の売店で販売開始した。さらに、同社はファンとの交流を重視し、2023年7月には複合型オウンドメディア「KanroPOCKeT」を通じてファンミーティングを開催した。ここでは、ファンからのフィードバックを収集、将来のマーケティング戦略に反映し、デジタルマーケティングの手法を洗練させていく計画だ。このような取り組みを通じて、同社は顧客との接点を強化し、市場での存在感を高める戦略を展開する予定である。2024年12月期は、自社独自の機能価値開発と技術を駆使して、付加価値の高い美味しさを追求する商品開発に注力する計画である。 (2) グローバル事業 同社はグローバル事業の一環として、中国市場でのビジネス拡大を目指している。中国の著名なキャンディメーカー、深柏市金多多食品有限公司(以下、Amos)との総販売店契約を結び、中国市場において「金のミルク」や「色えんぴつキャンディ」などの日本の人気商品を展開している。日本国内ではAmosの「4D グミ」を取り扱い、両国間での商品展開を図っている。中国市場においては、ヘルシー志向の高まりと糖尿病患者の増加に着目し、ノンシュガータイプの新ブランド「0糖1刻」を立ち上げ、アリババグループのECサイト「Tmall」での販売も行っている。加えて、中国でのブランド認知度向上のために「微博(Weibo=ウェイボー)」「紅小書(RED=レッド)」のようなSNSを利用したマーケティング活動を行っている。次期中計に向けて、米国市場へ挑戦すべく、課題の洗い出しやその解決に向けた商品戦略・マーケティング戦略・販売戦略を練っている。これまで培った同社のブランドや商品価値を世界に届けるため、部門横断の社内プロジェクトを立ち上げて全社で取り組んでいる。 (3) デジタルコマース・ヒトツブ事業 直営店「ヒトツブカンロ」を中心に、限定生産のプレミアム商品を提供し、個々の顧客との関係を深めている。この店舗では、特に工夫されたパッケージデザインと高品質な商品を販売している。加えて、既存ブランドの活用を通じて、デジタルプラットフォーム「KanroPOCKeT」で顧客が自由に商品を選べる定期便サービスやeギフトサービスを開始した。このサービスで、顧客は住所を知らない相手にも簡単にギフトを送ることができるようになった。一方で、「アメージングカンロ」シリーズを通じて、キャンディの新しい楽しさや魅力を提案している。このシリーズは、ユニークな体験を提供する商品を開発し、2023年には新商品「シークラゲグミ」を発売した。2024年4月に「ヒトツブカンロ 原宿店」「KanroPOCKeT ラボ」の新店舗を東京都渋谷区原宿にオープンした。同月には「ヒトツブカンロ」商品についても価格改定を実施済みだ。 (4) フューチャーデザイン事業 同社のフューチャーデザイン事業は、「サステナブル」と「Well-being」を重要なキーワードとして掲げ、持続可能な社会と個人の健康・幸福を促進する製品と取り組みに注力している。具体的には、同社の直営店「ヒトツブカンロ」から、環境に配慮した「ヒトツブカンロ earth」シリーズを展開している。このラインアップには、通常は販売されないキャンディの規格外品や、未利用の田んぼのお米から精製されたアルコールを使用した「地球をあるくウエットティッシュ」、さらにはサトウキビやトウモロコシなどの植物由来の生分解性素材を使用した「地球想いのハンドタオル」などが含まれている。2022年12月には、果実残渣を再利用した新しいタイプのグミ「リ ミカングミ」を発売した。この製品は、清見みかんの搾汁時に残る繊維質「清見パルプ」と果汁を使用しており、みかんの本来の風味を活かした製品である。2023年には、持続可能な取り組みとしてデザインファーム(株)ペーパーパレードと協力し、廃棄包材のアップサイクルに着手した。この取り組みでは、アップサイクルした雑貨を製作し、クラウドファンディングプロジェクトを通じて実施している。2024年12月期は、引き続き他社との協創により、新しい視点での商品・サービスを展開する計画である。 4. 2024年12月期下期の取り組み 2024年12月期下期においてコア事業のシェア拡大を図るため、生産・販売体制の強化が課題である。まず、生産と販売の効率化及び1品当たりの売上拡大を目指す。具体的には、販促施策を集中させることで重点品の売上構成比率を引き上げ、デジタル媒体を活用した店頭起点の営業活動を展開する。また、生産能力の増強も重要であり、製造人員の増強や松本工場のグミ棟拡張を進めている。このグミ棟は10月に稼働予定であり、「Kanro Vision 2030」期間中の生産規模拡大に向けた検討も進行中である。 新規事業の課題は、事業領域の拡大とスケール化である。これに対する対策として、まず海外市場の深耕と次期中期経営計画に向けた先行投資が挙げられる。具体的には、国や地域別の販促活動を実施し、輸出の拡大を図る。また、米国市場開拓のために戦略ブランドの選定・開発を進め、中国市場ではAmos社との取り組みを推進する。次に、ヒトツブ事業の販売強化と顧客生涯価値(LTV)の向上に向け、顧客ニーズを捉えた商品開発とプロモーションを強化する。さらに、共創先と連携して新規商品の上市と販路開拓を図るため、市場受容性の調査とOEM先の検討を行う。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞) 《SO》
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時価総額 49,241百万円
老舗菓子メーカー。1912年創業。国内飴市場でトップシェア。グミ市場でシェア2位。カンロ飴、金のミルク、ピュレグミなどが主力ブランド。ピュレグミはテレビCM効果などで売上順調。グミの生産体制強化を図る。 記:2024/10/20