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アンジェス Research Memo(9):紛争長期化で研究開発体制を知識集約型に移行

2024/4/4 12:59 FISCO
*12:59JST アンジェス Research Memo(9):紛争長期化で研究開発体制を知識集約型に移行 ■EmendoBioの開発状況 2. 事業戦略 従来は、独自のOMNIヌクレアーゼの開発にあたり、その探索と最適化を労働集約的に行ってきたため、開発人員が100名を超える規模になっていたが、今後はこれまで蓄積した大量のデータをベースにコンピューティング技術を活用して開発を行う知識集約型の研究開発体制に移行する。また、2023年10月に始まったイスラエルとパレスチナの紛争が長期化している状況から、アンジェス<4563>はEmendoのイスラエルにある研究施設で研究開発を継続していくことが困難と判断し、開発体制を再編成する方針を決定した。イスラエルの研究施設は継続して使用するものの、研究開発人員は半数以下に削減する見通し。一方、米国では臨床試験開始に向けた準備を進めると同時に、同社主導で開発パイプラインやOMNIプラットフォーム技術に関するライセンス交渉も進めるべく、米国での体制を強化していく計画となっている。 開発パイプラインのうち、ELANE(好中球エラスターゼ遺伝子)変異による重症先天性好中球減少症(SCN)※を対象とした臨床試験については、FDAとIND申請に向けた協議と並行し、ライセンス交渉も開始している。同治療技術に関心を寄せる医療機関等も多く、非独占的契約となる可能性が高いが、2024年内の進捗が期待できそうだ。 ※重症先天性好中球減少症とは、骨髄における顆粒球系細胞の成熟障害により発症する遺伝性疾患で、遺伝子変異により出生後の早期から好中球減少による中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を反復し、肺炎や敗血症などその他の疾患に至るケースもある。100万人に2人の割合で発症する希少疾患で、SCNの約7割はELANE変異による。 SCNの現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による感染予防が一般的で、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF※を使用して好中球の誘導を促す。ただ、G-CSFを高用量で使用した場合、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行し、造血幹細胞移植が必要となるケースもある。Emendoでは患者から造血幹細胞を取り出し、OMNIヌクレアーゼ技術を用いて正常な機能を有するELANEを発現させたうえで患者の体内に戻し、好中球の機能を回復させる根治療法の開発を目指している。Emendoが実施した動物実験では、正常な遺伝子を傷つけずに異常な遺伝子のみを正確に区別して破壊することで造血幹細胞が好中球に分化できたことを確認しており、同論文に関しては世界最大の遺伝子治療及び細胞治療の研究者団体のジャーナルにも掲載された。 ※G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。 一方、OMNIプラットフォーム技術のライセンス供与についても、複数のバイオベンチャーやメガファーマ等から引き合いがきており、同社主導で交渉を進めている段階にある。2024年3月には、がん免疫療法の一種であるTCR-T細胞治療薬の開発で業界をリードするスウェーデンのAnoccaと、OMNI-A4ヌクレアーゼの使用権についての非独占的ライセンス契約を締結したことを発表した。AnoccaはOMNI-A4ヌクレアーゼを用いて開発効率を高め、難治性固形がんにおけるKRASドライバー変異を標的とした臨床開発を進めていくことになる。今回の契約締結によってEmendoは、契約一時金50万米ドルと開発マイルストーンを合わせた総額で最大約100百万米ドルを受領する可能性があるほか、製品が販売された場合にはロイヤリティを受領することになる。そのほかの企業との契約交渉では、特定の開発プロジェクトで同技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業等があるようだ。いずれにしてもEmendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結し、幅広い企業や医療機関等で同技術を活用してもらい、遺伝性疾患の治療技術の進歩に貢献したい考えだ。 米国ではゲノム編集技術を用いた臨床開発段階のバイオベンチャーが複数社上場しており、時価総額は収益化前段階でも数億米ドル(数百億円)から数十億米ドル(数千億円)規模になっている。特に、初の製造販売承認を取得したCRISPR Therapeuticsについては株価が2023年の年初から60%上昇※し、8千億円を超える水準まで評価されている。国内でゲノム編集技術のバイオベンチャーとしてはモダリス<4883>が上場しているが、時価総額は30億円程度に過ぎない。開発の進捗状況やパイプラインの潜在価値、ライセンス契約の有無等によって異なるものの、総じて米国のほうがゲノム編集技術に対する投資家の期待値は高いことがうかがえ、Emendoも米国でIPOを実施し独自で資金調達を行うほうが効率的と考えられる。米国では、ゲノム編集技術を持つベンチャーと大手製薬企業が共同開発契約を締結する事例も増えている。EmendoにおいてもAnoccaとライセンス契約を締結したことを皮切りに新たな企業と共同開発契約を締結する可能性は十分にあり、今後のライセンス交渉の進展に注目したい。 ※2024年3月12日終値で算出。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《AS》
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時価総額 8,753百万円
大阪大医学部発のバイオベンチャー。遺伝子医薬やDNAワクチンのバイオ医薬品を開発。受託数の順調増で手数料収入は伸長。研究開発費は減少。23.12期通期は損益改善。24.12期は大幅増収、損益改善計画。 記:2024/03/05
4883 東証グロース
77
4/26 15:00
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時価総額 2,585百万円
創薬ベンチャー。独自のゲノム編集技術による遺伝性遺伝子疾患の治療薬の研究開発や技術提供を行う。MDL-101がリードプログラム。研究開発費は増加。減損損失の減少等により、23.12期通期は最終損益改善。 記:2024/03/05