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平和RE Research Memo(5):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進(1)

2023/2/9 14:35 FISCO
*14:35JST 平和RE Research Memo(5):「着実な成長」と「持続可能な利益」により、投資口の流動性向上を推進(1) ■中長期の成長戦略 1. 中長期目標「NEXT VISION」 平和不動産リート投資法人<8966>は2009年9月に平和不動産が単独スポンサーとなり、2019年11月期で10周年を迎えた。その間、2011年5月期までの「成長基盤の再構築」、2011年11月期から2013年5月期までの「再成長軌道への回帰」を経て、2013年11月期からは「安定成長軌道」の段階に入った。すなわち、安定した資金調達による本格的な成長フェーズであり、着実な外部成長及び内部成長によって分配金向上を目指してきた。この結果、2009年11月期の物件数46件、資産規模921億円、分配金734円/口から、2022年11月期には物件数120件、資産規模2,133億円、分配金3,130円/口へと大きな成長を遂げている。 同REITでは、2021年11月期より中長期目標「NEXT VISION」を推進している。具体的には、今後5~10年で目指す姿を「投資口の流動性向上を推進するステージ」と位置付け、「Steady Growth & Sustainable Profit(着実な成長と持続可能な利益)」をスローガンに、従来からの分配金と資産規模に加えて、格付とESGを目標に加えた。数値目標としては、分配金3,300円/口(2021年5月期比500円増)、資産規模3,000億円(同1,159億円増)、AA格への格上げ、再生可能エネルギー電力の導入割合100%の達成を目指す。進捗状況としては、資産規模拡大と財務体質改善により2022年6月に格付がAA-(安定的)に向上して目標を達成したほか、再生可能エネルギー電力への移行についても2021年11月に対象106物件すべての切り替え手続きを完了し、ESGへの取り組みで追加目標としたGRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク:Global Real Estate Sustainability Benchmark)の3スター取得も達成した。また、分配金は3,130円/口(2022年11月期)、資産規模は2,133億円(同)と着実に成果を上げている。なお、「NEXT VISION」における分配金向上については、外部成長で+147円/口、内部成長で+104円/口、金利等費用で-26円/口を見込むが、潤沢な内部留保を活用することで+4,905円/口の支払余地があることが同REITの大きな強みと言えよう。 2. 外部成長戦略 外部成長戦略では、分配金向上+147円/口を達成するために「着実かつ健全な外部成長」「継続的な入替戦略の実施」「厳選された用途・エリア」を運用方針としている。「着実かつ健全な外部成長」としては、ポートフォリオの質と収益性の向上に資する物件に厳選投資し、スポンサーと協働することで開発など多様な手法による取得機会の拡大を図ることに加え、フリーキャッシュ及び借入余力を活用した機動的な物件取得を行う。「継続的な入替戦略の実施」としては、低収益物件、小規模レジデンスを優良なオフィスやレジデンスに入れ替えるなど、引き続きポートフォリオの収益力改善を図る。「厳選された用途・エリア」としては、優良なオフィス及びレジデンス双方への厳選投資や、東京都区部をメインエリアとしながらも平和不動産のサポートが得られる地方大都市にも厳選投資する方針だ。 スポンサー変更以降、資産の入替戦略を積極的に進めてポートフォリオの再構築を図るとともに、稼働率の上昇や賃料改定などにより収益力強化を図った結果、2022年11月期には含み益がさらに拡大し、NOI利回りも上昇するなど、ポートフォリオの質が大幅に改善している。今後も同戦略を推進することで、ポートフォリオのさらなる改善を図る方針である。 同REITのスポンサーである平和不動産はオフィス及びレジデンス開発を積極的に展開しており、同REITはそのなかから物件を取得している。2022年11月期は、平和不動産の販売用不動産のうち5物件を取得した。平和不動産の販売用不動産のストックは、2022年9月末時点でオフィス5物件、レジデンス2物件であるが、これらについても同REITの今後のパイプラインを支えることになる。加えて、同REITでは、普通借地権を活用したパイプラインの構築に取り組んでいる。スポンサーである平和不動産との協業により、借地権のデメリットを克服し、メリットを最大限に享受できるスキームを構築できるのが強みである。また、共有物件・区分所有物件の追加取得によって、ポートフォリオ価値の向上にも取り組んでいる。なお、既述のとおり2022年6月に2年連続となる公募増資を実施し、スポンサー以外の第三者からの物件取得も行っている。公募増資によって資産規模の増加、DPUやNAVの成長、LTVの引き下げを推進し、レバレッジを活用した成長余力の確保を目指している。 3. 内部成長戦略 内部成長戦略では、分配金向上+104円/口を達成するために「高稼働率の維持・向上」「賃料増額に向けた取り組み」「戦略的な資本投下」「付帯収入増加と費用削減」を運用方針としている。「高稼働率の維持・向上」としては、スポンサーやPM(プロパティ・マネジメント)会社と連携し適切かつタイムリーなリーシング施策の実施によるテナント需要の取り込み、良質な運営・管理、CS(顧客満足度)対応施策によるテナント退去の防止、ダウンタイム(空室期間)の短縮などを目指す。「賃料増額に向けた取り組み」としては、テナント入替時及び契約更改時における賃料増額や是正を推進する。「戦略的な資本投下」としては、物件競争力、収益性及びCS向上につながるバリューアップ工事を計画的に実施する。 オフィスの期中平均稼働率は、市場平均を大きく上回る98%台後半で安定的に推移しており、2022年11月期末は99.2%まで上昇した。短い空室期間で17区画合計5,000m2超の新規リーシングを達成し、コロナ禍により空室となっていた店舗の成約が寄与した。緊急事態宣言長期化の影響から減少していた賃料改定件数も、テナントとの対面による賃料協議が再開し、継続賃料改定は着実に進展している。大きな賃料ギャップ(市場賃料との乖離)を抱える物件の取得が進み、ネットギャップは依然として+124円/口と十分な成長余地が残っている。以上から、物件売買の影響を排除したオフィス・ポートフォリオの賃料(2013年11月期を100とする契約賃料指数)は104.7と前期比ほぼ横ばいで推移した。また、フリーレント(一定期間家賃が無料の契約形態)の解消に伴い、時間の経過とともに損益計算書上の賃料単価は契約賃料単価に収斂することから、自律的な賃料収入拡大によって今後7期間で+28円/口の寄与を見込んでいる。コロナ禍で一時停滞していたテナントの動きは徐々に活発化してきており、特に同REITの主要顧客は中小事業者が中心であることから、テレワーク促進等による退去の動きは見られないようだ。今後はコロナ禍の収束に伴い、従来の状況に回復する可能性が高いと弊社では見ている。 また、レジデンスにおいても、2022年11月期は非繁忙期ながら期中平均稼働率は97.10%と、上場以来過去最高を記録した。コロナ禍の影響を大きく受けた2020年11月期(94.61%)からの稼働率回復を目的として、リーシング施策(募集条件の緩和など)を実施した対象テナントに対して賃料増額交渉を実施した結果、更新戸数の43%が増額改定で着地した。コロナ禍前に入居したテナントが更新期を迎え、多くから賃料引き上げに理解を得たようだ。その結果、更新時賃料の増額改定率は4.75%と過去最高を記録した。増額改定での着地により、契約賃料指数(2013年11月期を100とする)は102.1に上昇している。なお、繁忙期となる2023年5月期は、コロナ禍で緩和した賃料の引き戻しに取り組む方針だ。投資エリア別では都心部の期末平均稼働率が97%台に回復し、ルームタイプ別ではコンパクトタイプ(40m2以上、60m2未満)の稼働率改善が顕著であった。今後もLED化、高効率な空調機器及び水回り設備の導入等による環境負荷の低減、無料インターネットの導入によるテナント満足度の向上など、リニューアル工事の実施によって、物件競争力強化と資産価値の維持向上を図ることで、賃料水準の改善と収益力の拡大を目指している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希) 《NS》
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平和不動産グループの投資法人で、東京都区部中心にオフィス及びレジデンスに集中投資する複合型REIT。運用資産は120物件超。稼働率は高水準。新規物件取得でポートフォリオ量の拡大、物件の質改善などを図る。 記:2024/10/25