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オンコリス Research Memo(4):がん治療に関わるプロセスを網羅的にカバー(2)
2022/3/9 15:24
FISCO
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*15:24JST オンコリス Research Memo(4):がん治療に関わるプロセスを網羅的にカバー(2) ■オンコリスバイオファーマ<
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>の開発パイプラインの動向 (3) 開発状況 テロメライシンは現在、国内と米国にて複数のプロジェクトが進んでいる。このうち、国内では中外製薬とのライセンス契約解消により、今後は食道がんを対象とした放射線併用の第2相臨床試験に集中し、2024年の国内承認申請を目指していくことにしている。一方、米国で進めている3本の医師主導による臨床試験についてはコロナ禍の影響もあって進捗が遅れており、企業治験へ切り替えて進めていくことが望ましいとの意見も担当医師から出ていることから、臨床試験の結果なども確認しながら、新たなパートナー企業とのライセンス契約が実現すれば、ライセンス先での企業治験に切り替えて開発を加速していくことも検討している。 a) 食道がん(放射線との併用療法) 食道がんを対象とした放射線併用療法による第2相臨床試験は、外科手術による切除や根治的化学放射線療法(放射線と抗がん剤を用いた治療法)が困難な患者を対象に行われ、ヒストリカルデータ(日本食道学会による放射線単独療法)との比較により有効性と安全性を確認する。予定症例数37例のうち、2022年2月時点で過半数の組入れを完了しており、今後も順調に組入れが進めば同社が目標とする2024年の国内承認申請は可能と見られる。先駆け審査指定制度※1の対象品目に指定されているため、早期審査により申請後1年以内に承認される可能性がある。同社は承認申請までに、「オーファンドラッグ※2指定」と販売パートナーとの提携実現を目指していく。 ※1 先駆け審査指定制度とは、対象疾患の重篤性など一定要件を満たす画期的な新薬などについて、(独)医薬品医療機器総合機構(PMDA)が薬事承認に関する相談・審査を優先的に取り扱い、承認審査期間を短縮することで早期実用化を目指すもの。通常は、承認申請から12ヶ月程度を目標に審査を行うが、同制度を活用することで審査期間を6ヶ月程度に短縮することが可能となる。テロメライシンは2019年4月に指定された。 ※2 オーファンドラッグとは希少疾病用医薬品のことで、日本では対象患者数が5万人未満で医療ニーズが高いものなどが指定条件となっている。オーファンドラッグとして指定されると、最長10年間の独占販売期間が得られる。 テロメライシンと放射線の併用療法では過去の臨床試験等の結果から、放射線単独療法と比較して高い治療効果が得られていることが確認されている。放射線をがん細胞に照射することでテロメライシンの感染が向上するとともに、放射線で切断されたがん細胞の遺伝子修復をテロメライシンが阻害することが要因と考えられる。このため、第2相臨床試験においても好結果が得られるものと期待される。 b) 食道がん(化学放射線療法との併用療法) 同社は2020年6月に米国の主要ながん研究グループであるNRGオンコロジーとの間で、食道がん患者を対象とした医師主導の第1相臨床試験を実施する契約を締結した。臨床試験の内容は、標準治療法である化学放射線療法を行いながらテロメライシンを隔週に3回投与し、安全性の確認と3ヶ月後の腫瘍の縮小効果を確認するというもの。完全奏効率が標準治療法を上回れば、次の開発ステージに進む可能性が高くなる(化学放射線療法単独で約50%程度)。また、3年後のがん再発率が既存療法より低ければ、食道がんにおいて外科手術以外の標準治療法候補となる可能性がある。予定症例数は15例(最大で21例)で2021年12月に第1例目の投与が開始された。コロナ禍の影響で開始時期が遅れたこともあり、組入れ推進のため治験施設を増やしていく予定となっている。食道がんを対象とするテロメライシンは、米国FDA(食品医薬品局)よりオーファンドラッグ指定を受けており、補助金支給や臨床研究費用の税額控除といった優遇措置が今後受けられるほか、販売承認された場合は7年間の販売独占権が得られることになっている。 c) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法) 食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんでステージ4の患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(開発:米メルク<MRK>、商品名:キイトルーダ)との併用療法による医師主導の第1相臨床試験が国立がん研究センター東病院等で進められ、2021年に予定していた22例の組み入れが完了した。同治験はテロメライシンによる局所療法で腫瘍を縮小させ、患者のQOLを高めることで免疫チェックポイント阻害剤の治療効果をさらに高め、患者の生存期間を延伸することが可能かどうかを確認する試験である。 前半の9例に関する中間報告について国立がん研究センター東病院が、2019年3月にAACR(米国癌学会)で発表している。投与を制限するような重篤な副作用は発生せず、副次評価項目である有効性評価として、9例中3例で全身での部分奏効が確認されたというもので、ペムブロリズマブの単独療法による臨床試験結果(部分奏効率13.1%)と比較して、併用療法による腫瘍縮小効果が期待できる内容であった。 また、後半の11例の試験結果についても2022年1月のASCO-GI(米国臨床腫瘍学会)で発表予定であったが、臨床試験に付随したバイオマーカーの測定に想定以上の時間を要したため発表は見送られた。現在は治験担当医師がデータを分析し論文を作成している段階にあるという。試験結果が良好なものであれば、免疫チェックポイント阻害剤の販売または開発中の企業とのライセンス契約締結に向けて支援材料となるだけに、その内容が注目される。ライセンス契約が実現した場合は、ライセンス先にて第2相臨床試験を進めていくことが想定されるが、有効性評価として2年後の生存率や再発率などを見る必要があるため、試験期間は数年程度と長期間にわたることが予想される。 d) 胃がん・胃食道接合部がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法) ステージ4の胃がん・胃食道接合部がん患者を対象とした免疫チェックポイント阻害剤との併用療法による医師主導の第2相臨床試験が、2019年5月より米コーネル大学などで進められている。ペムブロリズマブ投与中の患者に対してテロメライシンを投与し、半年程度の観察期間で安全性と有効性を評価する試験となる。予定症例数は18例で、2020年12月に評価可能な8例で中間検討会を実施した。投与した8例のうち、1例で部分奏功が確認されたほか、1例で腫瘍の大きさに変化がない安定した状態を保っており、長期生存例も2例という結果が得られている。また、問題となるような副作用の報告も無かった。コーネル大学の担当医師からは、「部分奏効率で標準治療を上回る結果であれば、企業治験に切り替えていく価値がある(ペムブロリズマブ単剤では約15%)」と言われている。同社では2022年中に18例における中間評価を行い臨床試験継続の可否を判断することにしており、治験施設を追加して組入れを推進していく予定だ。2022年2月時点で12例目の投与が開始されている。 e) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/放射線との併用療法) 同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと頭頸部がん患者(手術不能・再発または進行性頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結した。試験内容は、免疫チェックポイント阻害剤及び放射線との併用療法による試験で、安全性と有効性を評価する。コーネル大学では放射線療法とテロメライシンの併用による局所作用としての腫瘍縮小効果に加えて、免疫チェックポイント阻害剤を併用することで全身性の臨床効果を検証する。予定症例数は36例で、2021年5月に組み入れた第1例目の症例はCR(完全奏功)を達成するなど良好な結果を得られている。コロナ禍で進捗が遅れているものの、治験施設を追加することで組入れを推進し、2022年中に12例での中間評価を行い臨床試験継続の可否を判断することにしている。 f) 肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬との併用療法) 中外製薬において肝細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブとの併用療法による第1相臨床試験が2021年1月より開始されたが、ライセンス契約の解消に伴い両社協議のうえ、2022年10月までに同試験を終了することが決まっている。 ただ、肝細胞がんに関しては2014年から2020年にかけて台湾・韓国で提携先のメディジェンが単剤による第1相臨床試験を実施しており、評価可能な18例において安全性が確認されている。また、18例のうち3例で部分奏功が確認されたほか、8割は投与後の腫瘍体積が変化しないといった結果が出るなど薬効も確認されており、新たなライセンス先が決まれば、ライセンス先にて併用療法による開発を進めていく可能性がある。 g) 中国市場での取り組みについて 食道がんの患者数で世界最大となる中国市場では、2020年6月に中国のライセンス供与先であったハンルイ社との契約解消※を発表して以降、中外製薬を有力候補先として契約交渉を進めてきたが振り出しに戻った格好だ。ただ、重要戦略市場であることは間違いなく、今後もライセンス契約締結に向けた取り組みは積極的に進めていく方針となっている。 ※ ハンルイ社との契約解消理由は相手先の開発戦略の変更によるもので、テロメライシンの有効性、安全性に関する疑義は発生していない。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《ST》
関連銘柄 1件
4588 東証グロース
オンコリスバイオファーマ
703
11/22 15:30
+67(10.53%)
時価総額 16,044百万円
新規抗がん剤「テロメライシン」の開発を行う創薬バイオ企業。HIV治療薬やウイルス感染症治療薬、神経難病治療薬の開発等も。富士フイルム富山化学と販売提携契約締結。テロメライシンに経営リソースを集中。 記:2024/07/08
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