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アジア投資 Research Memo(8):安定収益の拡大と財務バランスの強化を目指していく

2020/12/10 15:08 FISCO
*15:08JST アジア投資 Research Memo(8):安定収益の拡大と財務バランスの強化を目指していく ■今後の方向性 1. 中期経営計画の概要 日本アジア投資<8518>は、2019年3月期より3ヶ年の中期経営計画を推進しており、最終年度を迎えている。「日本とアジアをつなぐ投資会社として、少子高齢化が進む社会に安心・安全で質と生産性の高い未来を創ります」という新たな経営理念のもと、VC業界を取り巻く環境変化への対応や課題解決に向けて、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直しを行い、収益拡大に向けた足掛かりを築く内容となっている。すなわち、この3年間を第1段階と位置付け、次の第2段階で収益やキャッシュフローの安定化を実現し、更なる成長に向けた投資を拡大するシナリオである。 具体的には、第1段階として、1)収穫期に入る既存のPE投資資産の売却により、利益・資金を確保するとともに、2)新たな投資方針(詳細は後述)による投資資産の入れ替えを行い、安定収益の拡大と財務健全性向上を目指していく。また、3)金融機関への約定返済の削減と、プロジェクト投資でのプロジェクトファイナンスによる借入金の増加を図る。そして、第2段階として、4)安定した収益とキャッシュフローを基盤として、更なる成長投資を実施する、という2段構えの戦略となっており、本中期経営計画は第1段階として位置付けられる。 2. 投資種類別の方向性 (1) PE投資 ファンドでの投資は、現状のファンドの投資方針を継続する一方、本体投資は、「同社として取り組むべき事業テーマ」を明確に持ち、そのテーマを軸に「企業への投資」(PE投資)と「事業への投資」(プロジェクト投資)を組み合わせる戦略的投資を推進する構えである。なお、「取り組むべき事業テーマ」については、「再生可能エネルギー」のほか、「スマートアグリ」(植物工場等)や「ヘルスケア」(介護施設・障がい者グループホーム)の3つを選定した(なお、ファンド資金による投資は、事業テーマに限らず、これまで同様、出資者ニーズに沿って投資)。情勢に応じて柔軟なテーマ設定を継続する方針であり、「ディストリビューションセンター」(物流施設)にも参入している。 (2) プロジェクト投資 安定収益確保のためメガソーラープロジェクトへの投資を継続し、投資残高増加を目指すとともに、その成功ノウハウを生かし、他の再生可能エネルギー(バイオマス、バイオガス、風力等)や新規事業テーマである「スマートアグリ」等へも展開していく。なお、メガソーラープロジェクトについては、これまで以上に採算性を慎重に検証して投資を行う方針である。また、プロジェクト投資資産からの収益を早期に獲得するため、今後の投資実行については、長期保有による安定収益獲得を目的としたプロジェクト投資から、短期(2~3年)での売却を前提としたプロジェクト投資に軸足を移し、長期的・短期的収益の最適な組み合わせを目指す方針へと転換した。具体的には、「植物工場」「障がい者グループホーム」「メガソーラー以外の再生可能エネルギー」は、これまで同様に、長期保有により安定的な収益貢献を期待する一方、「メガソーラープロジェクト」「高齢者施設」「物流施設」については、投資後2~3年での短期売却と新規投資を繰り返し行うことで資産を回転させ、インパクトの大きな収益貢献を目指す投資と位置付けており、今後は、この分野のプロジェクトに注力していく方針としている。 3. 財務目標とこれまでの進捗 (1) 収益構造 メガソーラーを軸とした再生可能エネルギー投資資産も必要に応じて売却しながら、既存PE投資資産の早期流動化による収益を通じて、持続的な利益成長を目指す方針である。ただ、中期経営計画初年度から予定していた株式売却の先送り等により既存資産の流動化・収益化の動きに遅れが生じ、その一部をメガソーラープロジェクトの売却で補う状況が続いている。同社は、これまでの進捗状況や足元での市場環境(コロナ禍の影響)等を踏まえ、2020年5月に最終年度の収益目標を引き下げ、従来連結基準による「親会社株主に帰属する当期純利益」を1.8億円(当初目標は7億円)、ROE 2.5%(当初目標は9.0%)に修正した。 (2) 財務バランス 相対的にリスクが低く流動性の高いプロジェクト投資資産を積極的に積み上げるとともに、PE投資資産については、既存資産の早期流動化・収益化及び戦略投資の実行等により入れ替えを図る方針である。ただ、こちらも既存資産の流動化・収益化の遅れに加え、メガソーラープロジェクト売却等の影響によりプロジェクト投資資産の積み上げにも大きな遅れが生じている。同社は、収益目標と同様、財務バランスについても最終年度の数値目標を引き下げた。具体的には、「プロジェクト投資資産」を61億円(当初目標90億円)、「現金及び預金とプロジェクト投資資産の合計額と借入金のバランス」を26億円(当初目標56億円)、早期流動化・収益化に取り組んでいる「戦略投資等以外の資産残高」を25億円(当初目標10億円)に修正。また、目標項目のうち、「プロジェクト投資資産の含み益」については、短期売却目的のプロジェクトへの投資に軸足を移すことに伴って除外されている。一方、戦略投資については順調に拡大しており、2年目で目標(残高10億円)を前倒しで達成した。 弊社では、中期経営計画の当初の数値目標には届かない状況となっているものの、新たな投資方針に従って明確な方向性を示したことは、収益基盤の強化に向けた第1段階として一定の評価をしている。特に、プロジェクト投資における各事業が順調に立ち上がってきたことや、それに紐付く戦略投資の積み上げは、今後の収益拡大に向けた足掛かりとして評価できるポイントと言える。したがって、今後の方向性に大幅な変更はないものと考えられ、次の第2段階(次期中期経営計画)において、いかに具体的な成果に結び付けていくのかが重要なテーマになるだろう。これまでの資産の伸びや収益の下支えに貢献してきたメガソーラーに代わるプロジェクト投資資産の積み上げに注目したい。特に、世界的に注目されているSDGs(持続可能な開発目標)への取り組み(事業機会)を、他社との連携を生かしながら、同社成長に取り込んでいく戦略が大きなカギを握るものとみている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫) 《NB》
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独立系総合投資会社。プライベートエクイティ投資、再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛ける。豊富な投資経験などが強み。ジーエヌアイグループと業務提携。中計では27.3期営業利益12.5億円目標。 記:2024/10/07