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サンワテクノス Research Memo(6):利益率の改善やビジネス機会の拡大を加速させることを目指す

2019/6/17 15:06 FISCO
*15:06JST サンワテクノス Research Memo(6):利益率の改善やビジネス機会の拡大を加速させることを目指す ■新中期経営計画『NEXT 1800』 3. 「コアビジネスの強化で顧客のものづくりに貢献する」の重点施策 4つの基本方針のなかで、このテーマはサンワテクノス<8137>の収益成長により直接的に言及しているという意味で、弊社では最も重要なものと考えている。 新中期経営計画では、“コアビジネス”の中身が前中期経営計画から変更されている点が注目される。それはエンジニアリング事業とグローバルSCMソリューション事業の2つが新たにコアビジネスに加わったことだ。同社は技術系商社であり、安川電機<6506>を始めとする大手産業機器メーカーの有力代理店として活動してきた。そうした代理店事業が同社のコアビジネスであることは今も変わりはないが、一方で同社ならではの付加価値の創造にも取り組んできた。それは同時に利益率の向上や商機拡大にもつながる。 その観点から同社が取り組んできたのがエンジニアリング事業とグローバルSCMソリューション事業の2つだ。これらは代理店事業で取り扱っている3つの部門の商材の販売手法であって、何か別の事業部門ということではない。しかしエンジニアリング事業としての拡販、あるいはグローバルSCMソリューション事業の拡大は3部門の拡販と密接につながるため、一段と強化していく意思を明確にするためにあえてコアビジネスの中に組み入れたものと弊社では推察している。 (1) エンジニアリング事業の概要と進捗状況 同社の伝統的な代理店事業においては、取扱商材が電機部門・電子部門・機械部門の3つの領域に分かれている。これらはそれぞれ利用目的(例えば、生産財か、設備機器か)や需要ドライバー(最終製品の消費需要か、設備投資需要かなど)が異なり、それゆえそれを取り扱う同社自身も、3つの部門に応じた組織体制のもと、それぞれ別個に営業活動を行いながら成長を遂げてきた。 しかしながら、技術開発に伴う各商材の高機能化やソフト化、また、需要先のニーズの高度化などの流れのなかで、個々の商材を単品で販売するだけではニーズに対応できず、いきおい、商機も拡大しにくい状況となってきた。そこで同社は、3領域の商材を同社自身が組み合わせてシステム化して顧客に販売することに力を入れている。これが同社のエンジニアリング事業だ。すなわち、エンジニアリング事業とは、何か別の新しい事業ではなく、代理店事業の各商材についての言わば販売手法を言う。 食材に例えて言えば、従来は肉と野菜と米を素材のまま個々に販売していた(代理店事業)のに対し、それぞれの食材を用いてカレーライスも作って販売しようというのがエンジニアリング事業ということだ。カレールーに不可欠なスパイス(カレー粉)の調達や味付けが同社が生み出す付加価値ということになる。 エンジニアリング事業の事業規模は年々拡大し、ここ数年は同社が事業開始時に当面の目標としていた100億円の大台を安定的に上回る状況が続いている。このことがエンジニアリング事業をコアビジネスへと“昇格”させた大きな要因と考えられる。 注意が必要なのは、エンジニアリング事業とはあくまで伝統的な代理店事業における販売手法のことであり、エンジニアリング事業の売上高は、3つの事業部門の売上高とダブルカウントになっているということだ。ではなぜエンジニアリング事業が重要かと言えば、それは利益率改善への貢献が期待できるためだ。前述のように、エンジニアリング事業の拡大はスパイスの調達や味付けという付加価値の増大につながる。この部分は同社がこれまで積み重ねた知識や経験が“原材料”であるため、非常に利益率が高くなる。エンジニアリング事業として販売した分の売上総利益率は、現在でも全社平均を明確に上回っている。将来的に、スパイスや味付けの部分の厚みを増していくことができればエンジニアリング事業の利益率は一段と拡大し、全社の利益率押し上げに大きく貢献すると期待される。 新中期経営計画の経営目標の中に、エンジニアリング事業だけの数字は特に設定されていない。売上高については、年ごとの大型案件の状況などで、必ずしも右肩上がりとなるわけではないことが理由の1つとみられる。しかしながら利益率についてはエンジニアリング事業を開始したそもそもの動機がその点にあるため、貪欲に追求していくとみられる。これまでの同社との対話の中で、エンジニアリング事業については15%~20%の売上総利益率はあってしかるべきという考えが繰り返し表明されている。それゆえ新中期経営計画期間においてもその水準を目指していくものと弊社では推測している。 (2) グローバルSCMソリューション事業の概要と進捗状況 グローバルSCMソリューション事業もまた、エンジニアリング事業同様、過去数年、同社が拡大に注力して来た事業だ。これもまたエンジニアリング事業と同様に、電機・電子・機械の3部門の商材の販売手法・営業手法の1つである。グローバルSCMソリューション事業の売上高と3部門の売上高とはダブルカウントの関係にある点でもエンジニアリング事業と同様であり、注意が必要だ。 グローバルSCMソリューション事業は、同社が古くから行ってきた調達代行や物流代行、納期管理といったサービスがルーツとなっている。これらは商社に求められる重要な機能の1つであり、同社も当然にそうした機能を果たしてきた。それをグローバルSCMソリューション事業という形で改めて注力している背景には顧客側の事情と、同社自身の戦略の両面がある。 顧客側の事情としては、大手メーカーといえどもグローバル物流や在庫管理、資材調達等に関する人材が不足している状況がある。事業構造改革やリストラの過程でこの分野が削減対象となってきたためだ。しかし大手企業ほど効率的な生産体制を追求し、国をまたいだ事業移管などを頻繁に行っているという現実がある。結果的にこれらの分野についてアウトソーシングのニーズが生まれることになる。同社は、技術系商社としての長い歴史で蓄積したノウハウと海外ネットワークを活かしてその需要を取り込めるという構図だ。 一方同社側の戦略とは、グローバルSCMソリューション事業を契機としたビジネスチャンスの拡大と、エンジニアリング事業との連携の拡大だ。グローバルSCMソリューション事業というのは、言わば顧客の手間の肩代わりだ。同社は事業として展開する以上、正当な手数料をチャージして収益源としてはいるものの、利益率は本質的に低い。利益率の改善が経営の大きな課題となっている同社にとって、グローバルSCMソリューション事業の拡大は、プロダクトミクス悪化による利益率低下を招くため、一見する目指す方向に逆行する動きと見える。しかしながら実際にはそうではない。グローバルSCMソリューション事業は前述のような顧客側の事情があるため、受注できれば“丸抱え”状態となり、そこを突破口に他の取引に拡大する可能性が高く、また、エンジニアリング事業としての商機にもつなげやすいという構図だ。 個人の引っ越しを例に取ると、従来の調達代行や物流代行の時代は荷物を旧宅から新居に移動して終了だ。一方、グローバルSCMソリューション事業においては、引っ越してすぐにテレビやパソコンが使えるよう、アンテナやWi-Fi機器を調達し設置するところまでカバーする。新居の地域に応じたアンテナやWi-Fi機器の選定・調達と配線の構築がエンジニアリング事業にあたり、この引っ越しを契機に外構の整備を受注できればビジネスの拡大につながる。 グローバルSCMソリューション事業の進捗も順調だ。前々中期経営計画『JUMP 1200』の時代に準備を進めた後、前中期経営計画『Challenge 1500』から売上高100億円の大台乗せを目指して注力してきたが最終年度の2019年3月期において目標を達成した。こうした状況を受けて、新中期経営計画『NEXT 1800』ではグローバルSCMソリューション事業もまたコアビジネスに位置付けて、一段の強化を目指すこととなった。 実態面での変化としては、2019年4月からグローバルSCMソリューション部を発足し、これまではどちらかと言えば受け身の営業体制だったものを、プロアクティブな営業体制へと変更したことが挙げられる。 新中期経営計画におけるグローバルSCMソリューション事業の数値目標は、エンジニアリング事業同様、公表されていない。前述のように2019年3月期において目標だった100億円の大台乗せを達成したことから、次の区切りである200億円が当面の目標になるだろう。米中貿易摩擦やブレグジットに代表される世界的な自由貿易体制への修正の動きは、生産拠点の見直しと国をまたいだ移転の動きを加速させる可能性がある。仮にそうなった場合、メーカー側にはそれを実行する部隊が不足しているため、同社のグローバルSCMソリューション事業にとっては大きなビジネスチャンスとなる。エンジニアリング事業との合わせ技という視点も意識しつつ、グローバルSCMソリューション事業の成長を見守りたい。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之) 《MH》
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