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東都水産 Research Memo(4):変革が迫られる水産流通

2017/12/1 15:34 FISCO
*15:34JST 東都水産 Research Memo(4):変革が迫られる水産流通 ■会社概要 3. 水産流通の仕組み (1) 水産流通 例えば黒潮を回遊する近海のマグロは、延縄(はえなわ)※漁によって捕獲する。1匹の重さは80kg~150kgにもなる。このようにして捕獲されたマグロは、鮮度を保つため急速に冷凍された後、港に水揚げされ、多くは東京の市場へ出荷される。このように、全国各地の魚介類は全国各地の港に陸揚げされ、大型トラックや保冷車、冷凍車によって都会の卸売市場へと大量に運ばれる。卸売市場では、東都水産<8038>のような卸売業者が荷受けし、卸売業者によるセリで最高値を付けた仲卸業者や売買参加者に販売される。仲卸業者は市場内にある店で街の魚屋や寿司屋など小売業者に販売し、小売業者は街にある小売店に運んでさらに小分けして一般消費者に販売する。 ※延縄(はえなわ):1本の長い縄にたくさんのつり糸を垂らす漁法。マグロ漁法にはそのほか「一本釣り」「まき網」などがある。 (2) 卸売市場 卸売市場はこのように、水産物流通の中で荷を受けてから仲卸が小売りへ販売するまでを役割とする。ちなみに、市場というのは本来自由が原則だが、日本の卸売市場は地方公共団体が開設・運営する公設制度で、公平を図るため法律で市場内の取引を規制するという、世界でもあまり例のない独特の市場制度になっている。 東京都中央卸売市場の場合、扱うものは市場により異なる。野菜・果物とその加工品など青果は築地市場ほか大田、淀橋、豊島、板橋、世田谷、北足立、多摩ニュータウン、葛西の各市場の青果部が扱っている。生鮮・冷凍の魚介類やその加工品など水産物は築地、足立、大田の水産部で扱う。そして、牛肉・豚肉及びその加工品など食肉は食肉市場(品川)、鑑賞用の花・草木・枝など花きは北足立、大田、板橋、葛西、世田谷の花き部で扱っている。卸売市場の目的は大都市などに住む消費者に生鮮食料品を安定して供給することにあり、集荷→価格形成→分荷という基本機能のほか、決済(カネの流れ)や情報提供、衛生保持の機能もある。 もう少し具体的に言うと、同社のような卸売業者が荷受けした品物を卸売場に並べ、朝5時頃からセリ場で卸売業者のセリ人の呼びかけに応じて仲卸業者や売買参加者(買参権を持った小売業者など)といった買い手が指で値段を示し、最高値を付けた買い手がその品物を買うことができる。このような、大勢の買い手を前に公開で価格を決めるセリ取引(一部入札)のほかに、卸売業者と買い手の協議によって価格を決める相対取引がある。仲卸業者はセリなどで買った魚介類を市場内にある店に運び、買出人と言われる街の魚屋や寿司屋など小売業者に買いやすい大きさや量に小分けして販売する。そして、販売代金の徴収や出荷者への支払いを速やかに確実に行う一方、当日の市場入荷量や卸売の価格、その他生鮮食料品などに関する情報などを収集し公表する。また、巡回や抜き打ち検査などによる食品の安全性のチェックや施設・設備の衛生管理なども行われている。 (3) 築地市場 築地市場は、都内に11ある東京都中央卸売市場のうち最も古い歴史を持つ、主に水産物(水産部)、青果物(青果部)を取り扱う総合市場である。その供給圏は、都内だけでなく関東近県に及ぶ。特に水産物については世界最大級の取扱規模を誇り、日本の建値市場※としての役割も果たしている。築地市場では、水産物で約480種類、青果物で約270種類を取り扱っている。1日の入場者数は4万人以上、入場車両数は2万台弱あり、入荷から販売まで24時間活動している。築地市場の水産部には、東都水産のほか、大都魚類<8044>、中央魚類<8030>、第一水産(株)、築地魚市場<8039>、丸千千代田水産(株)(加工品及び塩干、水産冷凍品のみ)、綜合食品(株)(加工品及び塩干、水産冷凍品のみ)計7社の卸売業者がいる。ちなみに青果部は東京シティ青果(株)、東京中央漬物(株)(漬物類のみ)、東京中央鳥卵(株)(鳥卵のみ)であり、生鮮に限れば、水産で5社、青果で1社ということになる。 ※建値市場とは、ほかの市場で取引の参考となる価格を形成する力のある市場のこと。 (4) 健康に良いとされる水産物 ところで、魚は人間が生きるうえで必要な9種類の必須アミノ酸をバランス良く含んだ良質なたんぱく源なのである。また、魚には人間の健康を支える様々な成分が含まれており、特にドコサヘキサエン酸(DHA)とエイコサペンタエン酸(EPA)といった不飽和脂肪酸は、肝臓がんや糖尿病予防、肥満の抑制などに効果があることが最近の研究で示された。また、アレルギー症状の改善やうつ病の緩和、認知症の予防などにも効果があると言われている。さらに、消費者庁は、食品の機能性に関する科学論文に基づく評価(2012年)において、心臓や血管疾患のリスク低減、血中の中性脂肪低下、関節リウマチの症状緩和の3点について、DHAやEPAが機能しているという明確で十分な根拠があるとした上、新生児の脳の正常な神経細胞の発達のためには一定量以上のDHAが必要であるとの推察も加えている。 このほかにも、肝機能の強化や視力の回復などに効果が期待されるタウリンはイカやカキ、疲労の回復に効果があるバレニンは鯨肉、未利用天然資源と言われるキトサンはカニやエビの殻に含まれている。また、小魚を丸ごと食べれば不足しがちなカルシウムを摂取できるし、海藻類にはビタミンやミネラル、食物繊維が多く含まれている。このように、水産物には人間の健康を支える様々な機能が含まれており、美味しさだけでなく優れた栄養特性を持つ食品ということができる。近年、こうした水産物の健康への効用が広く知られるようになり、世界的に水産物の需要が拡大している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光) 《MH》
関連銘柄 4件
8030 東証スタンダード
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時価総額 14,606百万円
水産物卸売事業が主力。水産物取扱量は豊洲市場内トップ。約500種類、2000品目超を取り扱う。ニッスイが筆頭株主。冷蔵倉庫事業、荷役事業等も。水産物卸売事業ではサプライチェーンの拡充、商品開発等に注力。 記:2024/07/29
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時価総額 22,143百万円
1935年創業の水産物卸売会社。生鮮・冷凍魚介類、水産加工品の販売を行う。生鮮・冷凍マグロ等が主要取扱品。冷蔵倉庫及びその関連事業、不動産賃貸事業も展開。高付加価値商品の深耕、海外事業の拡大等に注力。 記:2024/10/08
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時価総額 7,472百万円
東京・豊洲市場拠点の独立系水産卸売会社。生鮮水産物や冷凍水産物、加工水産物の水産物卸売業を中心に、冷蔵倉庫業、不動産賃貸業も展開。27.3期売上高650億円目標。冷凍水産物の加工製造販売事業の強化図る。 記:2024/08/12
8044 東証2部
1,223
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+2(0.16%)
時価総額 3,867百万円
築地市場中心に生鮮・冷凍魚介類や水産加工品の荷受・販売を行う。太田区や足立区等にも拠点。不動産や小売も。マルハニチロ傘下。マルハニチロがTOB実施、成立なら上場廃止へ。20.3期通期は不動産賃貸が堅調。 記:2020/05/15