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きちり Research Memo(4):クラウドサービス展開型のPFS事業が育ちつつある

2016/10/11 17:06 FISCO
*17:06JST きちり Research Memo(4):クラウドサービス展開型のPFS事業が育ちつつある ■きちり<3082>の強みと成長戦略 弊社では競争が激しい外食業界の中で、同社を成長余地の大きい企業の1社として注目している。理由は、収益性の高い業態開発力を持っていること、関東圏での出店余地が大きいこと、出店拡大のために必要となる人材の採用力と育成力に優れていることに加えて、外食企業のIT化を支援するクラウドサービス展開型のPFS事業が育ちつつあることなどが挙げられる。 (1)業態開発力 同社は主力の「KICHIRI」を2002年に出店以降、現在までブランド・コンテンツ活用型店舗も含めて17業態の開発を行ってきた。特に、ここ最近では「いしがまやハンバーグ」やダイニングバーの「ajito」「igu&Peace」など収益性の高い業態の開発に相次いで成功している。社内で業態開発に関わる人材が育ってきたことが要因と考えられる。例えば、「KICHIRI」では出店費用等の投資回収期間が3年程度かかっていたものが、「いしがまやハンバーグ」や「ajito」では2年程度で回収が進んでおり、営業利益率も「KICHIRI」を上回っている。こうした業態開発の実績を見て、商業施設等のデベロッパーから声が掛かるケースも増えている。同社では今後も新たな付加価値を提供できる業態開発を積極的に進めていく予定となっている。 (2)エリア展開 同社では、関東エリアで46店舗の出店を行っているが、今後200店舗まで出店余地はあると見ている。その根拠としては、関西エリア(京阪神+奈良県)で乗降客数2万人以上の駅数が312駅、出店店舗数が41店舗となっているのに対して、関東エリア(首都圏+茨城県)では同条件の駅数が903駅と約3倍あるためだ。単純に3倍すれば120店舗だが、「いしがまやハンバーグ」を筆頭に、今後多様な業態開発を進めていくことで、200店舗は十分可能と見ている。 特に「KICHIRI」の出店ターゲットとなる駅前の空中階物件に関しては競合他社が店舗数を縮小していることもあり、需給が軟化している状況にある。このため、今後は家賃相場も下落する可能性が高く、同社にとっては店舗数拡大に向けた環境が整いつつあると言える。大型商業施設を中心に展開している「いしがまやハンバーグ」や「3 Litlle Eggs」についても坪当たり売上高が大きく、デベロッパーからの評価も高いことから、新規オープンする商業施設での出店依頼が相次いでいる。 こうしたなかで、2017年6月期には関東、関西以外の主要都市部への出店も新たに計画している。デベロッパーからのリクエストによるもので、今後も収益性が見込めると判断すれば地方都市部への出店も進めていく方針だ。同社では「業態開発×エリア拡大」を進めていくことで、今後も年間10店舗を超えるペースでの出店を継続していく計画となっている。 (3)人材採用力と育成力 前述したように、居酒屋業界では慢性的な人手不足により退店を余儀なくされるチェーン店が多くあるなかで、同社においては人手不足の影響が深刻にはなっていない。同社では早くから正社員の採用強化を進め、必要な人材を確保できていることが要因である。新卒採用者数で見ると、2015年春の71人から2016年春は86人に増やしており、2017年も100人の採用を予定している。 同業他社が人材確保に苦労するなかで、同社が順調に新卒社員を採用できているのは、独自の教育制度やキャリアプランに加えて、飲食事業やPFS事業(ブランド・コンテンツ活用型、クラウドサービス展開型)等の多彩な事業ポートフォリオを展開していることが要因と考えられる。また、アルバイトスタッフ(パートナー)に対しても、学生を対象とした就活支援制度や退職者に対するパートナー卒業式を毎年開催するなど、自由闊達な雰囲気と同時に、関わる人すべてを大切にする「おもてなし」スピリットが浸透している企業としての認知度が向上していることも一因と考えられる。 また、人材育成力に関して同社では「きちりMBA」制度を導入している。講師は社内スタッフで構成されており、全従業員が受講可能となっている。プログラムは「理念研修」から「ビジネススキル」や「おもてなし」といった日々の現場で必要となるスキルを身に付けることができるほか、「マネジメント」や「リーダーシップ」など幹部候補制向けのプログラムなども用意されており、これらを受講することで社員一人ひとりのスキルが向上している。 店舗を拡大していくために最も重要となる人材の面において、同社では人材採用力や育成力を強みとして、今後も年間100名以上の採用を継続していく方針となっている。 (4) PFS事業の拡充 PFS事業ではブランド・コンテンツ活用型、クラウドサービス展開型の2つの事業形態により事業拡大を進めている。とりわけ、クラウドサービス展開型については2016年に入ってIT企業等とのアライアンス戦略を積極的に進めている。同社のプラットフォーム上にITを活用した新たなサービスメニューを加えることでサービス内容の質を高め、事業の一段の成長を目指していく戦略だ。 具体的な取り組みとしては、2016年3月にiPadを活用したSaaS型POSレジシステム「ユビレジ」を展開する(株)ユビレジと資本業務提携を行い、「ユビレジ」をサービスメニューに加えたほか、8月には(株)フィスコ仮想通貨取引所、SJI<2315>と仮想通貨決済分野で、9月にはFintechベンチャーのBearTailと請求書自動データ化システムの共同開発でそれぞれ業務提携した。このうち、仮想通貨決済サービスについてはフィスコ仮想通貨取引所とSJIが開発したシステムを同社の店舗等に導入していく予定となっているが、まだシステムの開発段階であり、実際の店舗での導入時期については未定となっている。 一方、BearTailとの提携では既に商品化している「Dr.経費精算」※を同社が導入するだけでなく、請求書についての自動データ化機能について両社で共同開発し、自社での導入及びPFS契約企業への販売を行っていく予定となっている。電子帳簿保存法の改正によって、2016年1月よりスマートフォンカメラで撮影した領収書の電子データ保存が認められるようになったのに続き、2017年1月から請求書についても認められるようになったことで同機能を開発し、プラットフォームサービスのメニューに追加することとなった。店舗ごとに発生する請求書や領収書などの帳簿管理にかかる業務量を大幅に軽減できることとなり、売上増に寄与することが期待される。同社では今後もITを活用して経営の効率化に寄与するサービスを拡充していく計画となっている。 ※「Dr.経費精算」…スマートフォンで領収書を撮影し、スマートフォンアプリまたはWebブラウザからアップロードするだけで自動データ化され、入力オペレータが同データの入力代行を行うサービスとなる。従来と比べて経費精算にかかる手間が大幅に削減できるといったメリットがある。 また、2016年8月にはサントリーグループで外食事業(262店舗)を展開するダイナック<2675>と戦略的業務提携を締結し、両社の収益構造改革を推進していくことを発表している。具体的には、両社において購買、物流及び間接業務に関する合理的な仕組みづくりについての共同調査・研究活動を行っていくほか、先進的技術の導入可能性に関する共同検証活動などを行っていくことになる。同提携がすぐに同社の売上につながるわけではないが、共同研究や情報の共有化を進めていくことで、収益性の向上につながるソリューションサービスの開発につなげていく考えだ。 同社ではPFS事業において資本業務提携や戦略的提携などを積極的に推進していくことが、飲食事業におけるサービス品質並びに店舗収益力の向上につながるものと考えており、今後も両事業間のシナジー効果により事業を拡大していくものと予想される。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《HN》
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