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アキュセラ Research Memo(5):加齢黄斑変性の患者数は全世界で1億3500万人と推定

2016/4/26 7:56 FISCO
*07:56JST アキュセラ Research Memo(5):加齢黄斑変性の患者数は全世界で1億3500万人と推定 ■エミクススタトの成長性について 現在の主力開発パイプラインである「エミクススタト」は、地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性を適応疾患とした臨床試験が米国で進んでおり、また、2016年以降は糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫、スターガート病などの臨床試験も逐次進めていく予定となっている。 (1)加齢黄斑変性と治療薬の状況について 加齢黄斑変性とは、加齢とともに網膜に有害副産物が蓄積され、網膜で最も重要な中心部分(黄斑部)で光を感じとる役割を果たす細胞が損傷する病気で、眼のアルツハイマー病とも言われている。病気が進行すると視力の低下やモノの見え方が歪んで見えるなどの症状がひどくなり、最終的には失明に至るケースも多い。米国では50歳以上の人の失明原因のトップともなっている。患者数は全世界で1億3,500万人(2014年)、うち米国で1,225万人(2014年)※と推定されている。加齢により罹患率が高くなることから、今後も高齢者人口の増加によって、日本を含め患者数は増加の一途をたどると予測されている。 ※Market Scope, 2014 Report on the Retinal Pharma & Biotech Market, p66 また、加齢黄斑変性にはドライ型とウェット型の2種類があり、患者数の約90%がドライ型、約10%がウェット型となっている。ドライ型は病気が進行すると、網膜にある視細胞が萎縮し、進行期に至ると中心部から地図状に広がり症状が悪化する。その比率は15%程度となっており、患者数としてはウェット型加齢黄斑変性とほぼ同水準の規模と見られている。 治療法としては、ウェット型では抗血管新生薬療法(抗VEGF薬:新生血管の増殖・成長抑制剤)による抗VEGF薬の投与(眼内注射)が一般的な治療法となっている。抗VEGF薬としてはノバルティスが開発した「ルセンティス」やリジェネロンの「アイリーア(Eylea)」のほか、適応外使用でロシュ(VX<ROG>)の「アバスチン(Avastin)」などが使用されている。市場規模は2013年で6,537百万ドルとなっており、市場シェアは「ルセンティス」「アイリーア」の2品目で9割強を占めている。ただ、「アバスチン」の価格はこれら製品の20分の1程度で販売されているため、数量ベースでは「アバスチン」で4割程度を占めているとみられる。「アバスチン」は癌治療薬であり、加齢黄斑変性の治療薬としては未承認である。実際の用量は癌患者向けの本注射製剤の1/10以下の低容量による治療となるため治療コストが低減化する。もし、ウェット型加齢黄斑変性の治療に適応外使用で「アバスチン」が使われなければ「ルセンティス」もしくは「アイリーア」のシェアが数量ベースで約4割増えるため、市場規模は現在の倍に及ぶと推定されている。 一方、アキュセラ・インク<4589>が開発を進めている地図状萎縮を伴うドライ型加齢黄斑変性の治療薬はまだ承認された治療薬がなく、同社を含めて10社以上の企業が開発に凌ぎを削っている状況にある。臨床試験で先行しているのは、同社のほかにロシュの「ランパリズマブ(Lampalizumab)」があり、現在は臨床第3相試験を行っている。臨床第2a相試験においては「ランパリズマブ」が18ヶ月で有効性(地図状萎縮の病変進行の抑制効果)を確認したことに対し、同社の「エミクススタト」は、被験者数が小規模であることから統計学的有意差を示すことはできなかったが、3ヶ月で萎縮病変が抑えられている傾向が示されたことは有望であると思われる。地図状萎縮は時間が経過するほど病変部が拡大していくため、その進行をいかに早期に抑制できるかが重要なポイントとなるだけに、こうした結果は「エミクススタト」の将来性に対して、より一層自信を深めることになったと言えよう。また、「ランパリズマブ」は医者が眼内注射で薬剤を投与する必要があるのに対して、「エミクススタト」は経口剤であるという点も優位点である。 (2)視覚サイクルモジュレーション技術と「エミクススタト」の特徴 「エミクススタト」は同社が開発した視覚サイクルモジュレーション技術がベースとなっている。視覚サイクルとは、眼球の後部にある網膜内で、外部から入ってくる光信号を電気信号に変換する一連の流れを指し、ここで変換された電気信号が脳で映像として認知されている。この視覚サイクルの中で、過剰な光を受け続けると網膜内に有害副産物が少しずつ蓄積され、それが視覚障害を引き起こす原因となることが様々な研究で明らかになっている。 同社はこの視覚サイクルの働きから、有害副産物の蓄積を軽減するためには、網膜細胞のエネルギー消費を抑制することが重要との仮説を立て、検証を進めてきた。そこで網膜にしか存在しないタンパク質に選択的に作用する化合物を使って光に対する感度が高い杆体(かんたい)細胞を休ませることで、視覚サイクルの動きを調整(モジュレーション)し、網膜の細胞層を保護する技術を開発し、これを視覚サイクルモジュレーション技術と命名した。同社はこの視覚サイクルモジュレーション技術に関連する特許を世界各国で多数取得しており、同技術分野で世界をリードしている。 この視覚サイクルモジュレーション技術をベースに開発した化合物が、「エミクススタト」となる。「エミクススタト」の特徴は、網膜のみに作用することである。現段階において全身的有害事象は確認されていない、また、経口剤となるため侵襲性が低く患者の身体的負担が少ないという点が挙げられる。経口剤のため、眼内注射などの専門的な技術をもつ医者の治療の必要もない。また、「エミクススタト」は、新規化合物であり、視覚サイクルモジュレーションとしては世界で初めての薬剤候補だ。非臨床試験において、有害副産物の蓄積、光障害により生じる網膜変性、新生血管の増生のすべてを軽減することが証明されている。こういった特徴に加え、ドライ型加齢黄斑変性の治療薬として上市された薬剤が存在せず、アンメット・メディカルニーズに対する治療薬候補であることから、2010年にはFDAよりファスト・トラック※の認定を受けている。また、現在のウェット型の治療薬が対処療法であることに対し、「エミクススタト」は根本療法になる可能性があることを期待されている。 ※ファスト・トラック:深刻な疾患や生命を脅かす疾患を対象に開発されアンメット・メディカルニーズへの貢献が期待できる新薬の開発・審査の迅速化を目的とした制度。ファスト・トラック指定を受けると、製薬会社は申請資料を段階的にFDAに提出することが可能となり、FDAは全データの提出を待たずに、提出されたデータから順次審査を進めることができ、審査期間を通常よりも短縮できる。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《YF》
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時価総額 38,674百万円
眼科領域に特化したバイオベンチャー。加齢黄斑変性向けエミクススタト塩酸塩は糖尿病網膜症やスターガート病向けに開発。白内障向けや遺伝子療法オプトジェネティクスも研究継続。16年12月に三角合併で上場廃止。 記:2017/03/06