マーケット
10/10 15:15
39,380.89
+102.93
42,512.00
+431.63
暗号資産
FISCO BTC Index
10/11 0:17:09
9,039,102
フィスコポイント
保有フィスコポイント数
  
今月フィスコポイント数
  

ムサシ Research Memo(7):自動読取分類機をけん引役に右肩上がりのトレンド継続を予想

2014/7/9 17:25 FISCO
*17:25JST ムサシ Research Memo(7):自動読取分類機をけん引役に右肩上がりのトレンド継続を予想 ■各事業の詳細 (4)選挙システム機材 選挙システム機材は現在ではムサシ<7521>の代名詞ともいえる、同社を代表する事業となっている。この事業部門は、金融汎用システム機と並ぶ同社のオリジナル製品で、子会社の武蔵エンジニアリングで設計・製造を行っている。金融汎用システム機材と比較した場合、選挙システム機材は高シェアを有し、競合相手も少ないため、自身が価格決定権を有している。したがって事業としての採算性も高いものと推測される。 2014年3月期の売上高は3,616百万円(前期比17.7%減)だった。2014年3月期中には参院選が実施されたことで売上高水準としては高かったが、衆院選の開催で過去最高の売上高4,393百万円を記録した2013年3月期には及ばなかった。2015年3月期の売上高は2,100百万円を予想している。参院選の改選期ではなく、衆院選についても目下の政治状況から考えて解散・総選挙に至る可能性は乏しいとの読みから、国政選挙が無い年度になるという前提になっているためである。この想定は極めて現実的で妥当なものといえよう。 選挙システム機材事業の詳細 同社が選挙機材メーカーとして少なくとも証券市場においては高い認知度を誇っているが、具体的にどんな製品なのかはあまり知られてはいないようだ。一市民として投票所に行った場合、受付でハガキと引き換えに投票用紙が配布されるが、投票用紙は卓上の小さな機械から出てきたものを手渡される。この投票用紙交付機と投票用紙が(ほとんどの場合)同社の製品だ。その後、投票用紙に記入するときは、両側が板で仕切られたアルミ製の記入台で行うことになるが、このアルミ製記入台も同社の製品だ。それから投票するが、この際の投票箱も同社であることが多い。しかし何と言っても同社の最も重要な機器は、開票作業で使用される投票用紙の自動読取分類装置だ。これはオプションを装着すれば、投票用紙の表裏・天地を揃えたうえで手書きの投票内容を1分間に660票のスピードで読み取って仕訳して候補者ごとの棚に分類する。手書きであるにも関わらず、読取不能の発生割合は5%未満ということだ。人間の読み取り速度は1分間に6~7枚とされることから同社の自動読取分類装置は約100倍のスピードということになる。ここに選挙管理委員会が同社の読取分類機を導入するモチベーションが生まれる。 主力製品である読取分類機の価格は、本体が約270万円、仕訳棚が1本100万円、表裏取り揃え機が約100万円ということで、約500万円以下で1台のユニットが構成されることになる。東京都の場合、区部23か所、市部26か所、町村部4か所、島部9か所の合計62の開票区がある。そのすべてに読取分類機が導入されているわけではないが、一つの開票区に複数の装置が導入されているケースが多い。一方、投票所では読取分類機のような大掛かりな機材は使用されない代わりに数が圧倒的に多い。2013年の参院選の際の投票所数は、全国で48,777か所(期日前投票所除く)だった。これらのほとんどのところでは少なくとも1台の投票用紙交付機を始め、投票箱、投票用紙記載台、などが設置されている。 選挙関連機材の市場では、同社は主戦場ともいえる読取分類機において約80%と圧倒的なシェアを有している。同製品は現行モデルだけで2010年の発売以来1,000台超を販売してきた。他に高シェアな製品としては「自然に開く投票用紙」がある。これは全国でほぼ100%とみられている。 競合企業は多くはない。主力の自書式投票用紙読取分類機においては、グローリーが同様の機能を有する機種を発売している。投票用紙計数機や投票箱、記載台、各種候補者グッズなどについては日本選挙センター(非上場)などがある。しかし中核は選挙機器(交付機、計数機、読取分類機など)のエリアであり、この分野では同社の優位性は揺るぎないと考えられる。同社の競争優位性の源泉は、紙幣計数機で培った技術にあるのは間違いないが、さらに元をたどると、同社の紙に対する知見というものがあるのではないかと思われる。それが機器の信頼性につながりシェアを拡大してきたという流れが容易にイメージできる。 投票用紙のシェアがほぼ100%という点も非常に興味深いポイントだ。投票時に折られる投票用紙は、投票箱の中でひとりでに開くような特殊加工がなされている。この投票用紙と機器類のマッチング(相性)は、動作の信頼性にも影響を及ぼし、同社からすれば利点として有効なセールストークになると考えるからである。紙加工品の商事会社からスタートした同社の面目躍如といえよう。 選挙システム機材事業の収益構造の考え方 まず、同社の選挙システム機材事業の対象市場は、現段階において国内のみである。その理由は、日本の選挙が世界的に見ても特異な市場だからだ。特異であるポイントは、投票時においては高い透明性と正確性が要求され、開票時においては速報性(スピード)と正確性が要求され、何よりも、それらの実現のためにしっかりとした予算措置が取られていることにある。例えば、不正投票のポイントの一つは投票用紙の交付時にある。これを防ぐために同社の投票用紙交付装置がある。この機器のポイントは1枚ずつきちんと出てくるということと、厳密な枚数管理にある。また、日本では投票締切から速やかに開票作業が開始され、マスコミ各社は開票速報を競い合う。こうした開票スピードへのニーズが同社の主力製品である自動読取分類装置の需要へとつながる。そして何よりも、こうしたニーズ実現のために予算措置が講じられていることだ。このような選挙文化を有する国家は他には例を見ないとされている。 市場を考えるとき、もう一つ重要なポイントは「業績に影響を与える選挙は国政選挙に限られる」ということだ。地方選挙においては主催者が地方自治体ということになり、選挙費用は自治体の負担となる。限られた選挙予算のなかから選挙システム機材をそろえるのは財政的に厳しいケースがほとんどだ。しかし、国政選挙の場合は、選挙事務は国から各地方自治体への委託事務となり、国が費用を負担することになる。こうした背景から、同社の選挙システム機材の売り上げ動向は国政選挙と高い連動性を示す。 国政選挙の実施のタイミングと同社の選挙システム機材売上高を重ね合せると、明らかに両者には強い相関性があることがわかる。1993年3月期から2014年3月期までの過去22年を対象に分析すると、参院選が行われた年が8年、衆院選が行われた年が7年、いずれの国政選挙も行われなかった年が7年、という内訳となる。それぞれのケースについての選挙システム機材売上高の平均を出すと、参院選実施年だけの平均売上高は2,831百万円、衆院選実施年は3,198百万円、国政選挙非実施年は1,516百万円と、それぞれの平均売上高に明確な差が見て取れる。また、こうした平均値の差は、一時的な異常値の影響を受けたものではなく、長期的な「傾向」として存在していることがグラフから読み取ることができる。 下記のグラフのもう一つの重要なメッセージは、選挙実施年同士の比較でも選挙未実施年同士の比較でも、売上高が右肩上がりのトレンドラインを描いているということだ。これは、自動読取分類機のような高額な機器の販売が増えてきていることが理由と考えられる。問題はこのトレンドが今後も続くか、ということだが、弊社ではまだ当面はこのトレンドが続くと考えている。理由は大きく二つだ。一つ目は、自動読取分類機の普及率が約50%にとどまっており開拓余地が大きいうえ更新需要も期待できることだ。二つ目は同社の読取分類機の高シェアが将来的に維持されると考えられることだ。前述のように同社は投票用紙でほぼ100%のシェアを有しており、用紙と機械のマッチングによる正確性の担保というのは商品セールス上、説得力があると弊社では考えている。詳細に分析すると、自動読取分類機の売上構成比は、販売が増加する国政選挙実施年であっても、選挙システム機材売上高の4分の1~3分の1程度と推定される。したがって、同製品の需要動向だけで選挙システム機器売上高の動向が決まるわけではないのだが、自動読取分類機をけん引役として、選挙システム機材事業の売上高は、上下動を繰り返しつつも右肩上がりトレンドを続けるものと予想している。 国政選挙は「たまに」「数年に1回」実施されるというイメージが強いが、整理して振り返ると決してそうではないことがわかる。国政選挙は3年に2回のペースで実施されており、「国政選挙の無い年がイレギュラー」なのである。すなわち、同社は国政選挙の特需銘柄なのではなく、安定的に選挙関連機器需要の恩恵を享受している企業なのである。「特需」銘柄であるという理解が同社の業績安定性への過小評価へとつながり、それが株価バリュエーションでの割安放置へとつながっている可能性があると弊社は考えているが、こうした見方は同社の収益の実態を反映したものに修正される可能性があると言える。 前述したように2015年3月期は国政選挙が実施されない可能性が高い。では2016年3月期はどうか。2015年度中に衆院の解散が無ければ2年連続で国政選挙が開催されないことになる。これは過去、1983年6月に参院選が実施されてから1986年7月の衆参同日選まで丸3年間国政選挙が無かった時以来30年ぶりの出来事となる。この場合、衆院の任期満了が2016年12月に控えているため、2017年3月期中には、衆参両院選挙が同一年度中に実施されることになる。業績インパクトとしては、2017年3月期に、衆院選と参院選が別日程で開催される場合が最も単年度の同社の業績を押し上げると考えられる。しかし、業績面で最も好ましいのは、2016年3月期に衆院選実施、2017年3月期に参院選実施となる場合であろう。各年の業績変動が平準化されるうえ、3年間の移動平均の値は最も高くなると考えられる。業績面でのあまり良くないシナリオは2017年3月期中の衆参同日選だろう。買い替え需要が、国政選挙1回分が消滅してしまうからである。 選挙システム機材事業の中期成長性の考え方 国政選挙は過去の経験則上、3年に2回のペースで実施されており、これが大きくどちらかに変動することは、国の選挙制度上、考えにくい。したがって、中長期成長性は、同社の選挙システム機材の導入がどの程度進展するか、ということになってくる。 現在の普及率は、投票用紙交付機や計数機などは実質的に100%に近い水準に達しているものと推測される。一方、読取分類機のなかでも大型の機種はまだ50%程度というのが同社による分析だ。投票所の規模によっては大型の分類機を必要としない開票区もあると考えられるが、それでもこの分野の販売余地は大きいといえる、また、既に導入した自治体においても、大型読取分類機の登場から10年が経過したことで、今後はリプレース需要が視野に入ってきている。開票事務機械化の際の大まかなエコノミクスとしては、国政選挙3回で人件費節減分が機械導入費を上回る(導入のプラス効果が出てくる)、といわれており、3年に2回のペースで国政選挙が行われている現状からすれば、10年単位でのリプレース需要は期待するだけの根拠が十分にあるといえる。 同社の中期成長性を考えるもう一つのアングルとしては国民投票、少子高齢化というものも指摘できよう。それらに関しては、「中期成長シナリオ」の項で詳述している。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之) 《FA》
関連銘柄 1件
7521 東証スタンダード
1,723
10/10 15:00
-42(-2.38%)
時価総額 13,698百万円
情報・印刷・産業システム機材が主力。1946年創業。金融汎用・選挙システム機材、紙・紙加工品等も。選挙システム機材で国内トップシェア。業務用ろ過フィルターは販売順調。デジタル非破壊検査機器の販売等に注力。 記:2024/09/02