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カナダドルに政局リスク【フィスコ・コラム】

2023/11/19 9:00 FISCO
*09:00JST カナダドルに政局リスク【フィスコ・コラム】 カナダドルが対ドルで弱含み、今年の安値圏でもみ合っています。対米金利差が背景にあり、一段安が見込まれます。中東情勢の不安定化で原油相場が急騰すれば資源国通貨としての買いが期待されるものの、政治情勢にリスクが生じれば戻りを抑制しそうです。 カナダドルは今年7月に原油相場の先高感から強含んだ後、年初来高値の1.3091ドルをピークに失速。米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締め長期化観測によるドル買いに押され、3月の金融システムリスクの際に付けた1.3861ドルを今月はじめに下抜けました。その後もカナダドルの戻りは限定的で、引き続き昨年安値の1.3977ドル、心理的節目の1.40カナダドルが意識されています。 背景にあるのは対米金利差。カナダ銀行(中銀)は米FRBに追随し、2022年3月から利上げサイクルに入りますが、インフレ沈静化に伴い今年3月と4月は政策金利引き上げの見送りを決定。その後は6月、7月に引き締めを再開したものの、9月、10月は休止。中銀はインフレ率が2025年中に目標レンジ内に収まるとしながらも、これまでの利上げが経済活動を圧迫している可能性を認めました。 ところで、9月の中銀定例会合に合わせ、複数の州首相が金利高の悪影響を訴え一段の引き締めをとどまるようマックレム中銀総裁に書簡で求めたことが明らかになりました。中銀の政策決定に政治サイドが直接アプローチするのは、地方の州とはいえ圧力になりかねません。それに対し、同総裁は追加措置の余地があるとしたうえで、中銀の独立性に言及し苦言を呈しています。 直近ではアルバータ州で行われた州議会選挙で野党候補が勝利し、トルドー政権には逆風が吹いています。最近の世論調査でトルドー首相の支持率は就任後最低となる30%台と低迷。コロナ禍での強硬姿勢に対する国民の反発で人気が凋落したトルドー首相は、住宅危機の緩和や生計費増大への対応と政権浮揚に向けた対策を模索。ただ、財政の悪化はカナダドル安につながるため、中銀にとっては頭の痛い問題です。 逆に、政権奪還に向け勢いづく保守党は、政府が無謀な支出を通じてインフレを誘導し、住宅の価格を押し上げ入手困難な状況にしたと批判を強めています。トルドー氏が次期総選挙の2025年まで政権を維持できるか不透明な情勢です。イスラエルとハマスの戦闘が激化すれば原油相場の高騰が予想され、カナダドルの押し上げ要因になるものの、政局リスクがネックになりそうです。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》