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苦悩のスペイン政局【フィスコ・コラム】

2023/10/22 9:00 FISCO
*09:00JST 苦悩のスペイン政局【フィスコ・コラム】 スペイン政局の混迷が続いています。ここ数年で党勢を拡大した右派ポピュリスト政党の政権入りはひとまず回避。ただ、新政権発足は暗礁に乗り上げ再選挙が避けられない見通しです。不安定な政治が好調な経済の足を引っ張り、ユーロの下押し要因になりかねません。 今年7月のスペイン総選挙を受けた首相指名選挙が9月末に行われ、第1党に躍進した中道右派、国民党(PP)のフェイホー党首は過半数の支持獲得に失敗。それにより現首相で第2党の中道左派、社会労働党(PSOE)のサンチェス党首が国王から組閣を要請されました。11月末までに新政権を発足させられなければ国王は議会を解散し再選挙が実施される見通しで、その可能性が高まっています。 スペインではここ数年、選挙と組閣が繰り返されるなど政治情勢は不安定化しています。そのきっかけは、2018年に政権内で汚職が明らかになり、PPに所属していた当時のラホイ内閣が不信任決議により退陣したことです。2019年の総選挙でPSOEが7年ぶりに政権を奪還。しかし、同党は少数与党で他党との連立交渉は難航します。結局、同年11月に再選挙を実施し、どうにかサンチェス政権を発足させました。 現憲法下で初の左派連立となったサンチェス政権の支持基盤は脆弱で、今年5月の地方選でPSOEは連立を組む極左政党、ポデモスとともに大敗。サンチェス首相は12月に予定されていた総選挙を7月に前倒しし、PPに政権奪還を許しました。そうした混乱のなか、極右ポピュリズム政党のボックスは着実に議席を増やし第3党に躍進したものの、今回の選挙では大幅に議席を失います。 スペイン議会下院の定数は350議席。ボックスが党勢を維持できれば欧州連合(EU)に否定的なPPとの右派連立政権が見込まれていたのですが、ボックスは政権入りを果たせません。左派連立のサンチェス政権に厳しい評価を下したものの、右派連立政権の発足を認めない投票結果からは有権者の苦悩ぶりがうかがえます。やはりフランコ独裁政権の残像が、極右による政権への参加を躊躇させているのでしょうか。 ユーロ圏は現在スタグフレーションに見舞われ、域内第4位の経済規模を持つスペインも低成長に甘んじています。その半面、このところ海外からの渡航者が顕著に増加し、国内経済の活性化とユーロ圏の成長に寄与しているようです。欧州中銀(ECB)の引き締め休止の観測が高まるなか、スペイン政治の混迷は域内経済のリスク要因としてユーロ売りを加速させないか注視されます。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《TY》