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タイ新政権の発足が暗礁に【フィスコ・コラム】

2023/8/20 9:00 FISCO
*09:00JST タイ新政権の発足が暗礁に【フィスコ・コラム】 タイの新政権発足に向け、混迷が深まっています。3カ月前の総選挙で第1党となった野党が他党との連携協議から排除され、「タクシン派」の第2党を中心とした勢力が結集する見通しです。王室改革の民意は否定された形で、タイ経済の回復の足かせになりそうです。 5月14日に行われた下院選で、王室改革を掲げ若年層から支持を受けた野党・前進党が第1党に躍進しました。また、貧困撲滅で今も絶大な人気を誇るタクシン元首相の政治信条を受け継いだ同じ野党の貢献党は第2党となり、両党で6割近くの議席を獲得。選挙結果を受け他の野党も合流する形で前進党の党首ピター氏を首相に擁立し、民主化を求め計8党が連立政権発足に向け協議を進めてきました。 ただ、下院議員500人と上院議員250人の投票による首相指名選挙でピター氏選出にあたり下院8党で300人を超えたものの、軍部の意向を重視する上院では13人にとどまり過半数の376票に届かず、反対多数で否決されました。その後、タイ議会は同氏の候補者としての資格を無効と採決。前進党は連立協議から外れ、第2党の貢献党からセター氏を新たに擁立し、親軍派を加え新たな連立協議を始めています。 こうした政局を受け、タイ金融市場はもみ合いが続いています。タイは1%の富裕層が国富の6割超を持つといわれる超格差社会で、ピター政権の発足で民主化が実現すれば、消費ブームによる経済の活性化が期待されていただけに、株価や通貨バーツへの買いは抑制されているようです。プラユット政権が無力化しているため、市場には政治情勢の安定化を求める声もあり、方向感は定まりません。 タイ中央銀行は8月2日の定例会合で、政策金利を0.25ポイント引き上げ2.25%にすることを決めました。利上げは連続7回目の今回を最後に休止されると市場は予想。中銀総裁は今年と来年の成長率について、主力の輸出の低迷で3%台半ばに引き下げられると予想しています。極端な格差社会が是正されなければ個人消費は抑制されかねません。中銀は、新政権の政策内容が経済の安定に影響を与える可能性に言及しています。 第2党の貢献党を中心とした連立協議はその後、新たに政党を入れ替え9-10党体制となる見通し。22日に行われる第2回の首相指名選挙の行方が注目されます。2006年の軍事クーデターで失脚し国外逃亡中のタクシン氏は今月初旬にタイへ帰国する予定を取りやめ、貢献党を中心とする新政権発足を待つようです。汚職などで10年の実刑判決が確定している同氏がタイの空港に降り立つ日は来るのでしょうか。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》