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米利下げはやはり長期化?【フィスコ・コラム】

2019/8/4 9:00 FISCO
*09:00JST 米利下げはやはり長期化?【フィスコ・コラム】 米連邦準備理事会(FRB)が10年半ぶりの政策金利引き下げに踏み切りました。利下げは「予防的」なもので、長期化しないとの思惑がドル買い要因となりそうです。ただ、インフレ関連の回復が遅れれば、一段の緩和は避けられないように見えます。 FRBは7月30-31日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の予想どおり政策金利を25bp引き下げました。利下げは2008年12月以来10年半ぶり。パウエルFRB議長は会合後の記者会見で、経済の見通しは良好としながらも、金利引き下げの理由に関しては「下方リスクへの保険」とし、インフレの目標値である+2.0%への引き上げを目標にしているとの考えを述べています。 それに先立つ議会証言でパウエル議長の発言が想定外にハト派的な内容となったため、利下げサイクル入りの見方も市場にはありました。その点について、同議長は記者会見で「サイクル中盤での政策調整」であり「長い利下げサイクルの開始とは違う」と否定。半面、「政策を一段と緩和的にすることが適切」「1回だけの利下げで終わるとも言っていない」とも語り、年内複数回の可能性を示唆しています。 金融政策は様々な経済指標の総合的な分析に基づいて決定されますが、特にインフレ関連の比重が大きくなっていると思われます。パウエル議長は議会証言で、失業率低下の物価押し上げ効果を疑問視し、中立金利は想定以上に低いと指摘。FOMC後は「2%のインフレ目標達成は遅れる」との見通しも示しました。そのうえで世界的なディスインフレ圧力が根強いなか、成長を維持するため「適切な行動をとる」との方針です。 しかし、アメリカのインフレ指標のうち、目安となる消費者物価指数(CPI)は、昨年7月の前年比+2.3%をピークに緩やかな低下が続き、足元は+1.6%となっています。それを再び2%台に押し戻すには、やはりある程度の時間がかかりそうです。CPIの先行指標として注目される設備投資効率が今年の春先以降は伸び悩んでいることからも、利下げが1回では不十分とみられます。 ドル・円は、長期の緩和スタンスへの思惑が後退したことで米長期金利の上昇を手がかりに一時109円台に強含みました。今後は欧州中銀(ECB)をはじめ主要中銀のハト派寄りの見解が相次ぐ見通しで、今回のFOMCで緩和への消極姿勢を印象付けたFRBの政策方針によりドル選好地合いが目先は一段と強まりそうです。ただ、やはりインフレ関連が持ち直さないとドル買いは続かないでしょう。 一方、トランプ大統領は長期的かつ大幅な利下げに踏み切らなかったとしてFRB批判を強めています。それにとどまらず、空席となっているFRB理事に2016年の大統領選での陣営幹部、保守派の経済学者の2氏を送り込む方針です。その人事が承認されれば、今後のFOMCでは利下げが誘導されるでしょう。ファンダメンタルズだけでなく政治圧力を考慮しても、実質的に利下げは長期化しそうな情勢です。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《SK》