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利上げ批判の意図【フィスコ・コラム】
2018/9/2 8:35
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*08:35JST 利上げ批判の意図【フィスコ・コラム】 トルコのエルドアン大統領のお株を奪うような、アメリカのトランプ大統領による中銀への圧力が波紋を広げています。世界を相手にした貿易摩擦でみせる剛腕ぶりを、今度は金融市場で発揮するのでしょうか。 パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は8月24日、ジャクソンホールでの講演で、好調な経済を背景に目先の引き締めに引き続き積極的な姿勢を示しました。一方で、過度な利上げを避けたいとの見解も述べています。市場では利上げ打ち止めの見方が広がり、ドル売りに振れました。直前にトランプ大統領がFRBの利上げを「気に入らない」などと批判したことで、この講演は注目されていました。 パウエル議長の発言は、今後の政策余地を広げる狙いがあったとみられ、大統領を忖度したものではないものの、そうみられても不自然ではありません。トランプ大統領による利上げ批判はこれで3度目とあって、当然であるべき中銀の独立性が脅かされるとの懸念も出始めています。金融政策に直接意見を言わないとの不文律が金融大国で破られたことで、市場は少なからず動揺しているように思えます。 1960年代以降、各国政府は悪性のインフレに悩まされ、それを克服する過程で、専門性の高い金融政策は独立した組織である中銀に委ねるという現在のような体制が整備されました。政治家が自身への支持を集めようと景気浮揚に走って中銀に無制限に紙幣を印刷させれば、インフレに拍車をかけてしまいます。そうした事態を避けようと、中銀の独立性は確立されてきました。 しかし、最近ではどこの国もインフレではなくデフレに悩まされており、問題の解決には富の分配を要するため、金融政策ではなく政府が直接関与する財政政策によって経済を立て直すべきとの意見が強まっているのも事実です。それでも、アメリカ大統領が金融政策に直接言及したケースは記憶がありませんが、トランプ政権はそうしたカルチャーまでも破壊してしまうのでしょうか。 今年に入って始まった貿易摩擦は、トランプ政権が世界中を敵に回して始めた戦争です。世界貿易機関(WTO)からの脱退を検討する可能性を示唆したほか、最近では直接ドル売り介入に関する観測も出始めました。欧州連合(EU)をはじめメキシコやカナダも、力でねじ伏せようとするトランプ政権に譲歩以外に道はなさそうに見えます。向かうところ敵なしです。 仮に貿易戦争で関税率が引き上げられれば、物価は一時的にせよ上昇が見込まれます。その際に引き締め政策が制限されれば長期的なインフレリスクが高まる、と市場関係者は警戒しています。しかし、トランプ政権にはそうした正当な理論が受け入れられるとは思えません。FRBを中銀として尊重するよりも、ディープステートの一角とみて、根本から変えることを狙っているのかもしれません。利上げ批判にはそんな意図を感じます。 (吉池 威) 《SK》
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