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【フィスコ・コラム】激辛政局でタイバーツはどうなるか?

2017/10/15 7:00 FISCO
*07:00JST 【フィスコ・コラム】激辛政局でタイバーツはどうなるか? プミポン国王(ラーマ9世)死去から10月13日でちょうど1年。この間、タイ経済は順調に成長路線を維持してきました。対照的に、政治情勢は相変わらずの混乱で、来年にも行われる総選挙に向け長年の対立構造が鮮明となれば、通貨バーツの値動きにも影響を与えるかもしれません。 タイの国内総生産(GDP)は国王死去で消費がやや落ち込んだものの、2016年10-12月期は+3%を維持し、今年1-3月期は+3.3%、4-6月期は+3.7%と2013年以来の伸びを示しました。タイの主要株価指数SETも8月末から最高値更新が続き、10月10日には1700ポイント台に乗せています。輸出や観光、官民の投資が好調で、政府は年間の成長率を+3.7%と強気な予測を示しています。 こうした国内経済の好調を反映して、バーツは今年に入り騰勢を強め、9月には2015年4月以来、1年5カ月ぶりに33バーツまで上昇しています。1月からは10%近く値を切り上げました。ただ、足元のバーツ高は輸出産業の成長の足かせになりかねないとして、一段の上昇には警戒も広がっています。タイ中銀は2015年4月から政策金利を1.50%に引き下げ、その後は据え置いています。直近の会合でも利上げは見送られました。 バーツの一段の上昇を阻止する要因があるとすれば、政治の混乱でしょう。現在のタイ政府は、立憲君主制に移行した1932年以降、19回目のクーデターで2014年5月に成立した軍事政権です。総選挙・民政復帰への環境整備を進めるスタンスを掲げています。早ければ来年にも総選挙の実施が見込まれ、軍事政権に追われたタクシン元首相を支持するポピュリズム系のタイ貢献党(PT)が巻き返しを狙っています。 2011年7月に行われた総選挙では、PTの勝利により、タクシン氏の妹のインラック・シナワトラ氏が首相に就任しました。しかし、職権乱用の人事と批判され失職。また、在任中に政策として進めたコメ買取り制度が国庫に損害を与えたとする行政裁判をめぐり、インラック氏側は最高裁に上訴したものの、今年9月27日の判決公判で禁固5年の実刑判決が出ています。首相を務めたインラック氏は判決前に国外逃亡する事態となりました。 それとは別に、軍事政権は最近になって、国外逃亡中のタクシン氏を王室への不敬罪を理由に訴追する方針です。一方、タクシン氏も対抗措置をとる意向で、次期総選挙での「タクシン派」「反タクシン派」の対立は避けられそうにありません。タイの政治と経済の相関性は薄いといわれますが、政治情勢の混乱は観光客の減退や企業活動の停滞など国内経済に影響を与えないとも限らず、投資家も警戒が必要になりそうです。 ちなみに、プミポン国王は官僚・軍部など利害調整で手腕を振るい、国民から絶大な支持と敬愛を受けました。しかし、後を継いだワチローランコーン国王(ラーマ10世)は皇太子時代から遊び人として世界的に有名で、事態の収拾に乗り出す調停役は期待できず、バーツ安局面でも抑止力にはならないとみられます。 (吉池 威) 《MT》