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【フィスコ・コラム】ロシアルーブル1強時代
2017/6/18 7:00
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*07:00JST 【フィスコ・コラム】ロシアルーブル1強時代 カタールと湾岸諸国との国交断絶はロシアのハッキングによる偽ニュースが原因と言われています。事実だとしたら、アメリカ大統領選と同様、その目論見はここまで大成功でしょう。トランプ政権発足以来、国際政治の舞台ではアメリカの地位が著しく低下する一方、ロシアのプレゼンスは安定感を増しています。通貨ルーブルの昨年来の上昇基調はそれを暗示しているように見えます。 今回の国交断絶は湾岸の盟主サウジアラビアが、宿敵イランに好意的な小国カタールに一撃を与えるという単純な構図でした。そこへ、シリア問題や周辺国の思惑も絡み複雑な対立構造になってきました。カタール派はカタールと同じイスラム教スンニー派のトルコのほか、イランやシリア(政府)のシーア派連合が加わったグループ。また、反カタール派はサウジを筆頭にアラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、バーレーン、シリア(反政府)のスンニー派連合に色分けできます。 カタール派のうち、カタールと軍事協定を締結しているトルコは、即座に軍隊を派遣。トルコにとって、投資マネー維持の点でカタールは重要な国です。ただ、トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国ですが、同じ加盟国のアメリカはサウジ支持を表明しています。カタールには中東最大のアメリカ空軍基地がありますが、今後の運用はどうなるのでしょうか。このように宗派や安全保障、ビジネスなど多面的なつながりから関係する国や組織が入り乱れています。 今年5月にトランプ氏が初の外遊先としてサウジを訪問した際、サウジ側はもともと目の敵(かたき)にしていたカタールへの対決姿勢にアメリカの強い後ろ盾を得たと理解し、断交に踏み切ったと報じられています。つまり、トランプ氏が「火薬庫」の導火線に火をつけてしまい、和平構築へのこれまでの取り組みに対する信頼が失われたことは間違いないでしょう。そういう状況を心待ちにしていたのがロシアです。 中央アジアや中東でのアメリカの影響力を弱めたいロシアは、イランと利害が一致しており、アメリカの石油利権を守るサウジとの関係構築に従来は消極的でした。しかし、今月に入りロシアはカタールの湾岸諸国との関係修復への協力姿勢を打ち出す一方、原油の協調減産の延長に向け、サウジとも歩調を合わせ始めました。昨年のアメリカ大統領選で、国務長官として外交実績を持つヒラリー・クリントン氏が当選していたら、違った展開になったでしょう。ロシアが中東で主導権を握るには、トランプ氏の方が好都合でした。 プーチン大統領の狙いは、来年のロシア大統領選での再選です。国内経済の安定化とともに、国際政治での存在感をアピールする必要があります。欧米各国が選挙結果に翻ろうされるなか、ロシアは中国や中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)の首脳会合を主導するなど、着々と布石を打っています。「トランプ政権が発足して米ロ関係は悪化した」とのロシア側の見解は、すでにアメリカを管理下に置いた響きさえがあります。原油価格が不安定になった5月を除き上昇基調のロシアルーブルのドルに対する値動きは、そんな米ロの力関係を反映しているように見えます。 「吉池 威」 《MT》
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