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新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(1)【中国問題グローバル研究所】

2020/6/5 7:37 FISCO
*07:37JST 新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(1)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイー氏の考察を2回にわたってお届けする。 ——— 世界中の国々が、新型コロナウイルスに伴う制限を徐々に解除し始めている。イタリア、スペイン、ドイツなどのEU諸国では店舗やカフェが開店し、数週間を屋内で過ごし、困り果てていた市民は、生活の一部を慎重に再開している。中国は大部分が正常化しているが、一部の地域にとどまるものの新たな感染拡大が報告され、1億人以上が再びロックダウンに追い込まれている。国によってペースは異なるが、リスクが依然として存在するとはいえ、経済を再開させ、政府が課してきた人々を疲弊させるロックダウンから前進する道を示す必要があるという明確なシグナルが世界中で発せられている。 これは正常な状態への回帰ではなく、私たち全員が突入する新しい世界である。すべてが同じように見えるが、今ではすべてを新型コロナウイルスのレンズを通して見ている。この新たに制限された世界経済で最も懸念される事態は、米中関係の断絶かもしれない。これを新冷戦と呼ぶ人もいるが、中国メディアが冷戦思考をやめるよう呼びかけるのは、決まって、中国が近隣諸国や貿易相手に圧力をかけたり脅したりしたとして、各国から正当な批判を受けた時なのである。しかし冷戦は、米国が主導する自由世界とソ連およびその同盟国との間のイデオロギー闘争であり、今日の世界を表現するモデルや比較対象としてふさわしくない。中国の思惑に疑いの余地はない。中国は自分たちがイデオロギー戦争のただ中にいるとはっきり認識しており、アメリカ、EU、日本などの国々の自由と普遍的権利を脅威とみなしている。しかし、前述のような第2次世界大戦後の古いテンプレートは今日の世界を正確には反映していない。 ここ数日、バーチャルおよびジュネーブで世界保健総会が開催されている。スイス、中国、フランス、ドイツ、韓国、バルバドス、南アフリカの首脳が開会の言葉を述べたが、米国は述べなかった。WHOへの拠出額が最も大きく、第2次世界大戦後の秩序とグローバル統治体制を中心になって構築してきたアメリカだが、彼らの姿は見当たらない。トランプ大統領はその代わりに、調査が終わるまでWHOへの資金拠出を凍結し、総会期間中に、ひときわ強いレトリックでWHOを脱退すると脅しをかけた。過去100年間で最悪の公衆衛生危機のさなかにである。米国は前線から姿を消し、かつては自由世界と呼ばれていた他の国々は、わずか数年前の2016年にエボラ出血熱が流行した時と同様のリーダーシップを米国が発揮することを期待しているが、まだ発揮されていない。トランプ大統領は、自身の直言やツイートをリーダーシップだと思っているかもしれないが、そうではない。昔からの同盟国の多くは、政府も国民も、米国のリーダーシップの欠如に不信感を抱いている。国内のパンデミックを制御できず、他国を支援しリードする意志もない国だとみなしているのである。 過去数カ月間のコラムでは、新型コロナウイルスと政府によるロックダウンの悪影響を明らかにしてきた。中国は第1波を乗り切ったものの、復旧には程遠い。失業者、特に前職に復帰できない、または復帰しない移民労働者の急増に対処しなければならない。公式統計では、このような労働者を明確に除外して失業率を算出しているため、これらの失業者による影響は見られない。しかし、地方政府と中央政府にとっては頭痛の種であり続けている。企業が実際に中国から次々に撤退しており、また総じてサプライチェーンが中国から離れて多角化していることで、雇用問題はさらに悪化している。中国は信頼できる貿易相手国とはまったくみなされていない。世界中の国々は、医療従事者向けの個人防護具に関して、中国に依存すると苦労するということを学んだ。中国から離れるための多角化が進んでいる。 「新型コロナウイルスの世界で迫られる二者択一(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く 写真:INGRAM_PUBLISHING/アフロ ※1:https://grici.or.jp/ 《SI》