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新型コロナウイルスで見える米中関係(2)【中国問題グローバル研究所】
2020/3/9 16:47
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*16:47JST 新型コロナウイルスで見える米中関係(2)【中国問題グローバル研究所】 【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。 ◇以下、フレイザー・ハウイー氏の考察「新型コロナウイルスで見える米中関係(1)【中国問題グローバル研究所】」の続きとなる。 ——— 第1段階合意の履行の有無にかかわらず、中国に対する圧力が当面なくなる兆しはない。王毅外相はこれに対し、「私が言いたいのは、中国に対するこれらの非難はすべて虚言であり、事実に基づいていないということだ」と述べた。 MSCは開かれた討論の場として知られている。このため、王毅外相のみが参加者からの質問を拒否したこと、それに彼の演説会場が満員からは程遠かったことは注目に値する。中国の行動は言葉と相反するため、その発言に対しては基本的に不信感があり、関心は持たれていない。 こうした中で悪いニュースは続く。米司法省は、現在係争中のファーウェイに対する訴訟にRICO法違反容疑を追加した。「威力脅迫および腐敗組織に関する連邦法」(RICO法)は通常、マフィアの類を対象としているが、何年にもわたって企業にも適用されており、身柄引き渡しの訴訟が続く孟晩舟最高財務責任者(CFO)だけでなく、企業側にも重い罰則を科すことができる。ファーウェイを標的にすることは米国の対中戦略の重要部分であるが、中国政府が孟氏の逮捕に対する報復として中国内で人質にとっている2人のカナダ人の問題を提起し続けることも重要だろう。 米国務省は今週、中国の国営メディア5組織を「外国使節」と認定した。これら組織を事実上、中国国家の延長だと位置付けるもので、大使館と一部同様に扱う一方、外交上の免責特権は認めない。米国による非常に象徴的かつ遅きに失した措置である。新華社通信が中国共産党の代弁者であることを知らない者がいただろうか。しかし、中国政府はほどなく3人の中国系ジャーナリスト3人をウォールストリート・ジャーナルの北京オフィスから追放した。国籍は2人が米国、1人がオーストラリアである。中国側は、追放は2週間前の侮辱的な見出しに対応したものだと主張したが、その見出しも論評記事もこれら3人のジャーナリストが書いたものではなかった。中国系の記者を追放することにより、世界中の中国系の人々に対し、中国批判は全ての中国人に対する事実上の裏切りであり、中国政府の報復を覚悟するようメッセージを送ろうとしているのだ。そのような姿勢を中国は決して公式に認めないだろうが、レベルの低いやり方でこれを維持している。 貿易戦争休戦の善意はどこへ行ったのだろうか。ゼネラル・エレクトリック(GE)による航空機エンジンの中国への販売に制限が示唆された際、米政権から出た複雑なシグナルに中国指導部は多少の慰めを覚えたかもしれないが、トランプ大統領はツイートですぐにその考えを否定、少なくともトランプ氏が有利だと考える条件の下で、米国は中国や世界とのビジネスに門戸を開いていると主張した。中国との貿易を阻止するための口実として「国家安全保障」を使おうとする者は、あまりに軽々にその口実を使って貿易制限を正当化しているとさえ非難した。 たった1カ月間にこれだけの問題がある中で、米中関係がひとまず正常に戻ったと考える者はいないはずだ。数カ月間の小康状態を経て、「資本戦争」や中国企業の米国での上場制限を巡る報道が再び現れ始めている。マルコ・ルビオ上院議員は消え去っていないし、中国や中国企業への資本流入を制限しようというさらなる動きが出てこないと考える理由はない。 そして米国の大統領選まであと9カ月に迫るというのに、この議論には決着がついていない。3月3日のスーパー・チューズデーの民主党予備選では、民主党指名候補者が明確になってくる可能性があり、そうなれば大統領選に向けて米中関係の政策がより重要度を増すだろう。サンダース氏とブルームバーグ氏が恐らく先行すると思われるが、今の段階では何とも言えない。サンダース氏が中国に対してやさしくすることはないだろう。ブルームバーグ氏の会社は、中国指導部にとってネガティブな内容の記事を取りやめたことがあり、氏自身も中国での事業に大きな関心を持っているが、中国対話政策を掲げて出馬することはまずできないだろう。中国の雰囲気は変わり、「Covid-19」の発生で中国とその国民のイメージは必要以上に傷ついている。米大統領選は中国にとって心穏やかものにはならないだろう。 過去数週間を振り返ってみると、第1段階の貿易合意が成立したこと自体が信じ難いことだ。双方の不信感は相変わらず強い。新型ウイルスで両国の緊張関係が一層露呈し、中国共産党が感染を食い止めようと国内で取った劇的な措置でさえ、称賛と同じくらいの恐怖を引き起こした。米国など他国の人々は、中国のやり方が自分たちとは大きく異なることをはっきりと目の当たりにしている。 新型ウイルスは、米中間に本当に大きな隔たりがあることを浮き彫りにしている。このことは、中国との包括的な協定を巡る初期の交渉が全く結実しなかったため、大規模な貿易協定を複数の段階に分割せざるを得なかった理由を、まさに裏付けている。両国を分断する問題の範囲は広く、中には橋を架けられないものもある。 現在のところ、新型コロナウイルスがどうなるのか依然不明である。伝染メカニズムは完全には解明されていないが、感染が容易に拡大しているのは明らかだ。10万人をはるかに超える人々がすでに感染しており、中国がすべてのケースを把握し特定することは不可能だ。そのため、特に中国経済に対する長期的な影響に関して確かなことは一つもない。現在の中国には、SARSや世界金融危機後のように経済に資金を注入する財政や金融政策の余裕はないし、世界的な景気拡大の中にあるわけでもない。中国はできる限りの対応をするだろうが、前回の景気刺激策による信用膨張の影響にまだ苦しんでいる。第1段階で合意した購入約束の不履行や、既に発表されているコモディティ契約における国有企業の不可抗力条項は、歓迎されるものではないだろう。中国の成長と需要は、世界の多くの人々、とりわけ中国人自身が、所与とみなしてきたものだ。もしそれが劇的に減速して長期にわたって低迷が続くと、中国の指導者たちは自分たちが未知の領域に入っていることに気付くだろう。 中国が世界で持つ威勢と影響力の大部分は、その経済力に基づくものだ。誰も中国を友人や同盟国とは思っていないが、中国市場で何かが欲しいと誰もが思っている。もしこの状況が行き詰まったら、中国はその優先順位を再点検する必要があるだろう。楽観論者は、中国の制度の透明性と開放性の向上を期待しているかもしれないが、誰もそれを当てにはできない。経済がより早く回復したとしても、「Covid-19」は中国、そして中国と米国との関係に、良くも悪くも長期にわたる遺物を残さざるを得ないだろう。 写真:ZUMA Press/アフロ ※1:中国問題グローバル研究所 https://grici.or.jp/ 《SI》
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