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香港警察の強硬姿勢強まる、台湾総選挙前で中国の圧力が強まる可能性も【フィスコ 東アジア考察】

2019/11/26 15:23 FISCO
*15:23JST 香港警察の強硬姿勢強まる、台湾総選挙前で中国の圧力が強まる可能性も【フィスコ 東アジア考察】 香港では、11月に入って以降、デモ参加者に対する香港警察の強硬姿勢が一段と強まっている。18日には多くの学生が立てこもっている香港理工大学に香港警察が突入を試みた際、実弾使用の可能性をちらつかせた。香港警察が強硬姿勢を強めている背景には、習近平中国国家主席が香港デモを「暴力的な犯罪行為」と非難するなど、中国政府が香港政府に対する圧力を強めていることなどがあげられる。 また、11月中旬には、香港に駐留している中国の人民解放軍の兵士が、デモ参加者によるバリケードの撤去を行った。これは香港市民が困っている為、たまたま近くにいた兵士が助けたという話のようだが、デモの対応に人民解放軍が関わった初めての事例である。デモが長期化することで中国の影が徐々に濃くなっている雰囲気がある。 11月に入り香港警察に拘束されるデモ参加者も大幅に増加している。一部香港紙によると、6月から11月4日までに拘束された人は3332人で、香港警察は、今月1日から4日にかけては325人を拘束したと発表している。拘束者増加は、中国の圧力によるものとの見方だが、拘束者が増加している裏では、若者の不審死も話題となっている。 元々、香港のデモは自殺者との関連性が深い。香港で最大規模のデモとなった6月16日のデモは「200万人プラス1人デモ」と呼ばれている。「プラス1人」とは、デモ前日の15日に自殺した35才の抗議者のことを指しており、デモ発生当初から「後追い自殺(ウェルテル効果)」が問題となっていた。そして、9月以降は、15才の女子学生が全裸の水死体で発見されるなどデモ参加者と思われる不審死の増加がデモ参加者のなかで話題となっている。 香港警察の発表では、不審死はほぼ全て自殺という整理になっているが、一部の香港滞在者は「ここ数ヶ月の自殺は、手が縛られたまま黒い服のまま海から引き上げられるケースがある」と話している。噂の可能性もあるが、そのような話が伝わるほど香港市民はこうしたニュースに対してセンシティブになっているのだろう。香港警察の強硬姿勢が一段と強まった状況では、様々な思惑が交錯しやすいことから、中国のみならず、中国と貿易戦争を繰り広げている米国や旧統治国である英国などによる情報戦もし烈を極めよう。 また、ここにきて中国の圧力が高まった背景には、来年1月の台湾総統選も影響していると推測される。10月末に実施された世論調査では、再選を目指す「反中親米派」の民主進歩党(民進党)の蔡英文(さい えいぶん)氏が、「親中派」の中国国民党(国民党)候補者の韓國瑜(かん こくゆ)氏を12ポイント上回っている。香港デモに世界が注目した夏頃から蔡氏優勢の展開となっていることから、4年振りとなる中国国民党政権樹立による台湾支配を目論む中国政府からすると面白くはないだろう。米中貿易戦争が落ち着きを見せ始める一方、台湾総選挙への思惑などから香港のデモ長期化に対する中国の圧力は反比例的に強まる可能性はある。 《SI》