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穀物生産に与える気候変動の影響
2020/5/29 10:55
FISCO
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*10:55JST 穀物生産に与える気候変動の影響 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書で示された複数のシナリオのうち、温室効果ガス排出量削減の追加努力のない場合には、2050年の世界の平均気温は、2℃上昇、降雨量も12%増加する見積りとなっている。このシナリオでは、2050年に世界の農地面積が0.73億ha拡大して16.11億haとなる。気候変動等の影響により、オセアニア、中南米、アジアでは農地が増加する一方、北米、アフリカでは農地面積が減少すると見込まれている。2050年の主要穀物の需給状況は、農水省「2050年における世界の食料需給見通し」によると、欧州、北米、南米、オセアニアで需要量に比較して生産量が大幅に増加するものの、アジア、アフリカ、中東で純輸入量が拡大する見込みである。 農業環境変動研究センターの「気温上昇による収量への影響試算」によると、トウモロコシと大豆は、気温上昇が大きいほど収量の増加率が低くなり、米は、これまでの気温上昇(+0.5℃)より高くなると収量が増加、小麦は気温上昇による収量の影響が少なく、気温上昇に比例して平均収量が増加すると見積られている。農作物の生産性は、気温の他、降水量、日射量など他の気象要素や大気中の二酸化炭素やオゾンの濃度にも影響を受けると言われており、さらに、気候変動による干ばつ、洪水、台風の頻発・大型化などの異常気象の発生も大きく影響している。 農水省農林水産政策研究所は、「2029年の世界の主要穀物の生産・輸出量予測」を発表している。これによると、小麦の主要生産国は、中国、インド、ロシア、米国などであるが、このうちロシア、カナダ、米国が主な輸出国になると見積られている。米の主要な生産国は、中国、インド、インドネシア、バングラデシュなどアジアの国々であるが、ほとんどが自国の消費に回しており、インド、タイ、ベトナムが僅かに輸出を行っているという状況である。トウモロコシの主要生産国は、米国、中国、ブラジル、アルゼンチンであるが、米国、ブラジルはバイオ燃料の原料や畜産飼料として活用し、あわせて輸出にも回している状況である。大豆の主要生産国は、ブラジル、米国、アルゼンチン、中国などであるが、中国では、自国での生産では供給を賄えず、大きく輸入に頼っている状況が特徴的である。以上の結果から、主要な穀物は、米国、ブラジル、中国、インド、カナダ、豪州、アルゼンチンなどの国々が生産・輸出拠点となっているが、このうち中国、インドなどは自国民の需要が大きいため、輸出に至らないという状況が鮮明になっている。 2020年2月、IPCC第52回総会で第6次評価報告の概要が合意され、2022年5月に予定されている総会で承認、公表される予定である。主要穀物生産に関わる気温や温室効果ガスの影響のみならず、海面上昇、異常気象の発生状況の見積もりなどが明らかになるであろう。食料自給率がカロリー換算で4割しかなく、米以外の主要穀物を輸入に頼っている我が国の食料安定確保のため、得られたデータを最大限に活用し、食料安全保障政策に生かしてもらいたい。 《SI》
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