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アフガン崩壊の余波【フィスコ・コラム】
2021/8/29 9:00
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*09:00JST アフガン崩壊の余波【フィスコ・コラム】 平和の祭典であるオリンピックの余韻を断ち切るように、アフガニスタン政府の崩壊で中央アジアの地政学リスクが急浮上しました。今後、周辺の勢力図は大きく塗り替えられる可能性もあり、インドやパキスタンの動向が注目されます。 アフガニスタンを拠点とする武装勢力タリバンは8月15日、首都カブールに進攻。ガニ政権はあっけなく崩壊し、タリバンは近くカブールに反民主的な新政府を発足させる見通しです。同国の南東部に位置するパキスタンはこれまで、タリバンを密かに支援してきた経緯があります。宿敵インドへの対抗上、アフガニスタンの混乱に乗じて地域での影響力を今後強めていくだろう、と専門家は予想します。 金融市場もアフガニスタンの混迷に反応しています。同国の通貨アフガニは過去最安値を更新。すでに為替取引は成立していない状況のようです。一方、アフガニスタン人が難民となって周辺国に逃れ、パキスタンに流入しています。そのためパキスタン財政への懸念から国債利回りは急伸。国際通貨基金(IMF)はパキスタンに経済的な影響が波及するか判断するのは時期尚早とのスタンスです。 パキスタン通貨ルピーの値動きが1つの目安となるでしょう。ルピーは今年5月以降、下落基調に振れています。米連邦準備理事会(FRB)による引き締め観測を背景としたドル高のほか、パキスタンでの新型コロナウイルスまん延や経常赤字拡大によるルピー売りが主要因とみられます。アフガニスタンからの米軍撤退をにらんだタリバンの急激な勢力拡大も、混乱を先取りした売りにつながったと考えられます。 IMFが判断を保留しているのは、政治情勢が不透明だからでしょう。もともと反米感情の強い中央アジアは、アフガニスタンでのタリバン政権発足によりロシアや中国を中心に結束を強める可能性があります。カブール陥落からちょうど1カ月前の7月15-16日、中央アジアを中心に将来の地域統合を協議する国際会議がウズベキスタンで開かれました。中国やロシア、欧州連合(EU)を含む40カ国が参加しています。 「一帯一路」を進める中国はパキスタンの仲介により、アフガニスタンへの投資を拡大させてきました。アフガニスタンとパキスタンの西隣は、反米で保守強硬派のライシ政権が発足したばかりのイランです。タリバン政権のアフガニスタンが国際社会から受け入れられるかどうかは不透明ながら、同国を組み入れた経済圏が形成される可能性を秘めていると言えるでしょう。 そうした国々に囲まれた親米のインドは、パキスタンとの対立がいっそう激化するかもしれません。米バイデン政権と近いアラブ首長国連邦(UAE)は春先に両国の外相と接触したようですが、根深い敵対関係を是正するのは困難です。アフガニスタン情勢は、実に多くの国々が関わっています。そして、核保有国の印パによる米ロあるいは米中の代理的な対立が先鋭化すれば、世界的な混乱の引き金になりかねません。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》
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