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*15:02JST クイック Research Memo（2）：「人材」・「情報」ビジネスを通じて企業経営を支援し、社会に貢献する ■事業概要 1. 会社概要と事業内容 クイック<4318>は、人材サービス事業、リクルーティング事業、情報出版事業、IT・ネット関連事業、海外事業の5 事業を展開する総合人材サービス企業である。人材紹介を中心とした幅広い人材サービスと、人事関連のWebサイトおよびイベントの運営や北陸地域での出版・Web事業等の情報サービスを通して、事業理念である『「人材」・「情報」ビジネスを通じて社会に貢献する』の実現を目指している。 (1) 人材サービス事業 人材サービス事業は「人材紹介」と「人材派遣・紹介予定派遣・業界請負業等」の2つに区分される。人材紹介の運営メディアは「看護roo!（看護師領域）」や「Answers（製薬領域）」「建設・設備求人データベース（建設・設備・プラント領域）」「オートモーティブ・ジョブズ（自動車エンジニア領域）」など多岐にわたり、直近では2021年9月に、はたらく施工管理のための情報サイト「セコカンプラス」をリリースするなど、特定領域の深化と拡大に注力している。なかでも人材紹介需要が高止まりしている看護師領域を対象とした「看護roo!」は、看護師のコミュニティサイトとして圧倒的ブランドを確立しており、看護師のための掲示板や専門知識、技術向上に役立つ記事や動画、業界最大級の転職サイトなど幅広い情報を掲載していることに特徴がある。なお、「看護roo!」のさらなるブランディング強化を目的に、看護学生のための看護実習対策書籍「ズボラな学生の看護実習本 ずぼかん」を同年9月に発刊している。 一方、人材派遣では地域特性や得意分野に絞って業務を展開している。子会社の(株)キャリアシステムでは、主力の看護師派遣のほか、北陸・信越で医療福祉分野に強みを持つ「メディケアキャリア」サイトを運営している。また、保育士の派遣・紹介に関しては、子会社の(株)ワークプロジェクトが大阪・神戸を中心に関西エリアで転職を希望する保育士をターゲットにした専門サイト「ほいとも」を運営するほか、大阪府で小規模認可保育園・認可保育所「こぐまの森保育園」を5園運営している。 (2) リクルーティング事業 リクルーティング事業では、求人情報サイトや求人情報誌などに掲載する広告の案内から求人企業のニーズに合わせた広告制作までを行っており、(株)リクルートのトップ代理店の1社として、Webサイト「リクナビ」やフリーペーパー「タウンワーク」などのリクルートメディアを主に取り扱っている。近年急速に普及している求人情報検索エンジン「Indeed」は取扱高が好調で、リクルーティング事業の収益を下支えしている。なお「Indeed」については、同社を中心にその実績が評価され、クイックグループとしてゴールドパートナーに認定されている。また、採用パンフレットの作成や適性検査といった採用支援ツールの提案など、リクルートメディアに自社企画を交えた様々なサービスを提供しており、求人企業が抱える採用・人事の課題解消に向けた高いコンサルティング能力にも定評がある。ちなみに、これらのサービスは同社の求人企業向けサイト「採用サロン」に集約されており、新たな顧客開拓の窓口にもなっている。なお、2020年6月に子会社化したジャンプ(株)が持つ採用戦略の企画や採用マーケティングをはじめとする採用力向上のためのノウハウと、同社が培ってきた顧客資産や営業力、人材ビジネス分野のノウハウを連携させることによって、求人広告から採用戦略・企画立案、人事担当者育成、入社後研修といった周辺サービスまで、顧客企業をワンストップで支援する考えだ。 (3) 情報出版事業 情報出版事業では、子会社の(株)カラフルカンパニーが北陸3県と新潟県において地域情報誌の出版やポスティングサービス、「ココカラ。」ブランドで展開するコンシェルジュサービスなどの事業を行っている。地域情報誌の出版では地元情報に特化した幅広いジャンルのフリーペーパーなどに飲食店や住宅メーカー、求人などの広告を掲載して発行しており、ポスティングサービスでは折り込みチラシなどを各家庭に配布している。また、コンシェルジュサービスでは転職や家づくり、結婚などを考える人と企業を対面カウンターでマッチングさせるサービスを展開しているほか、「Indeed」による採用支援も行っている。なお、コロナ禍においても、コンシェルジュサービスの転職領域と「Indeed」は順調に拡大している。 (4) IT・ネット関連事業 IT・ネット関連事業では、子会社の(株)HRビジョンが、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」や「日本の人事部 HRカンファレンス」など、「日本の人事部」ブランドによるイベントの企画・運営のほか、Webプロモーション支援といったHRビジネス関連の事業を行っている。「日本の人事部」は経営者や人事担当者など21万人超の人事キーパーソンが正会員登録しているサイト、「日本の人事部 HRカンファレンス」は人事キーパーソンが集う日本最大規模のHRイベントであり、ともに強いブランド力を誇る。なお、「日本の人事部 HRカンファレンス」は、コロナ禍を機にオンライン化による開催で参加者の急増も実現している。また、IT・AIテクノロジーに強い子会社の(株)クロノスは、システム開発やエンジニア育成のための研修及びセミナーを行っている。 (5) 海外事業 海外事業では、現地の日系企業を対象に、米国や英国では人材紹介や人材派遣、中国では人事労務コンサルティングや人材紹介、ベトナムやメキシコ、タイでも日系企業向けに人材紹介を手掛けている。なお、これらのネットワークを利用して、国際間の転職支援「クロスボーダーリクルートメント」の展開を進めている。 2. 業界環境と同社の強み 人材サービス業界は、リーマン・ショックによる低迷から抜け出した後、アベノミクスと少子高齢化による人手不足を背景に十数年成長を続けてきた。なかでも、専門職に対する採用ニーズは非常に高い状態が続いている。一方、就業希望者と求人企業の接点は、スマートフォンの普及などからインターネット求人サイトの伸びが著しくなる一方で、フリーペーパーの増加は緩やかになり、従来型の有料求人情報誌や折り込み求人誌は低迷気味である。このことから、就業希望者にとって魅力的で役立つ情報が多数掲載されているWebサイトやスマートフォンアプリの開発・運営は、人材サービス業にとって必須となっている。 このような業界環境において、同社の強みは専門職の人材紹介と自社内のITエンジニア部隊にある。一般的に専門職の人材紹介は、ニッチ分野であるがゆえに収益化しづらいが、相対的に高い利益率を確保できるうえ、労働需給がタイトなため経済減速時でも比較的採用ニーズが高い傾向がある。同社は、特定分野の領域でシェアを獲得し横展開する「選択と集中」、自社サイト・自社ツールからのオーガニックな経路で転職希望者を獲得する「登録者獲得施策」、コンサルタントが企業と転職希望者の双方を担当することで精度の高いマッチングを実現する「一気通貫制」を特徴として、専門職の人材紹介で業績を伸ばしてきた。この「選択と集中」「登録者獲得施策」「一気通貫制」は業界のなかで大きな差別化要素であり、他社に対して優位性を保つための原動力となっている。 一方、同社のエンジニア部隊は、システム周辺のみならず、「看護roo!」をはじめとする転職希望登録者獲得のための自社Webサイトや、「ナスカレ（看護師のスケジュール管理アプリ）」など専門職の便利ツール（アプリケーション）の開発・運営も行っている。社内に自社エンジニアがいるということは、同社の業務システムや専門職独特の仕組み・慣習を理解したうえでシステム構築やWebサイト・アプリケーションの開発ができるということであり、他社に対して常に優位性を保つことができる要因となっている。 （執筆：フィスコ客員アナリスト　宮田仁光） 《NB》