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メキシコペソは「トランプ前」水準【フィスコ・コラム】

2022/7/3 9:00 FISCO
*09:00JST メキシコペソは「トランプ前」水準【フィスコ・コラム】 メキシコペソ・円が騰勢を強め、2016年1月以来の高値圏に浮上しています。インフレ抑制のための中銀による引き締め方針が主要因ですが、コロナ禍からの回復もペソを支援。ただ、対米関係に変化がみられ、今後の両国関係が再び材料視される可能性もあります。 メキシコ中銀は6月23日に開催した定例会合で政策金利を9会合連続で引き上げ、7.75%としました。利上げ幅は米連邦準備制度理事会(FRB)に追随し、0.50ptから0.75ptに拡大。直近の消費者物価指数は前年比+7.65%とインフレ高進が鮮明で、中銀目標の上限4%を大きく上回ります。中銀は今後も引き締め姿勢を堅持するとみられ、9月末の政策金利は9.25%と予想されています。 中銀のタカ派姿勢を受けメキシコペソは強含み、対ドルで2週間ぶり高値圏に一時値を切り上げました。対円でも堅調地合いとなり、やはり2週間ぶりの6.83円台に浮上。対ドルではドル買いに押される場面はありますが、ペソも選好され、方向感の乏しい値動きになっています。対照的に対円では円安を背景に上昇基調に変わりはなく、2016年1月以来、6年半ぶりの高値水準に到達しました。 振り返ってみると、トランプ氏が大統領選出馬を発表した2015年当時、それはまだ「ジョーク」と思われていました。ただ、共和党内での候補者選定が進むにつれ同氏の政権公約に盛り込まれたメキシコへの制裁は現実味を帯び、ペソ安に傾き始めます。そして、2016年の本選でまさかのトランプ当選によりペソは大幅安の展開に。同年11月は対円で5円を割り込み、当時の最安値を更新しました。 一方、メキシコは2018年に行われた大統領選で左派寄りの新興政党から立候補したロペスオブラドール氏が当選し、トランプ政権下のアメリカと協調関係を構築。カナダも交え、通貨安誘導を防止する為替条項などを加えた貿易協定を締結しています。2020年3月にはコロナ禍で市場は大荒れとなり、ペソは2016年の安値を下抜け4.22円まで下げますが、その後は景気の回復に合わせペソも持ち直しています。 世界銀行は直近の世界経済見通しで成長率を大幅に下方修正するとともに、新興国は債務危機に陥りかねないと指摘しています。中南米は右派政権が続いたコロンビアで左派政権が発足し、財政拡大による資金流出が警戒されます。ただ、メキシコ経済に関してはインフレが懸念材料ではあるものの、国内総生産(GDP)など回復も目立ち、格付け会社は今年の成長率を上方修正しています。 コロナやウクライナ戦争の打撃を克服しつつあるためか、ロペスオブラドール氏は対米外交での強気な姿勢が際立ちます。6月上旬に米ロサンゼルスで開催された米州首脳会議の際には、主催したバイデン米大統領がキューバなどを招待しなかったことに反発し、会合を欠席。それに呼応して、アメリカへの移民流入を回避する狙いの「宣言」には多くの国が署名を拒否する事態に発展しました。 メキシコにとってアメリカは最大の貿易相手ですが、中国とも接近し対米依存度を低下させています。他方、今年11月の米中間選挙で民主党が敗北し、ロペスオブラドール氏に好意的なトランプ氏の復活に弾みがつけば、今度はペソ高要因になるかもしれません。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》