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「ワクチン大国」の通貨に先安観【フィスコ・コラム】

2021/7/4 9:00 FISCO
*09:00JST 「ワクチン大国」の通貨に先安観【フィスコ・コラム】 コロナ禍で「ワクチン大国」としてその名を世界に知らしめたイスラエル。足元では、パレスチナとの停戦で通貨シェケルは持ち直しつつありました。が、国内経済の失速や政治的混乱といったリスクにより先安観が強まっています。 新型コロナウイルス危機は国際金融市場を大きく揺さぶりましたが、シェケルもそれに翻ろうされた通貨の1つです。2020年2月の1ドル=3.40シェケルから1カ月間で3.88シェケルまで10%超も値を下げます。その後は大きく切り返し、同年秋以降はイスラエル経済の記録的な成長が好感され過去最高値を更新。2021年1月には3.10シェケルまで上昇しました。1年弱の間に25%も水準を切り上げた格好です。 2020年11月の米大統領選で極端に親イスラエルへ偏ったトランプ前政権の退潮が鮮明になっていたため、本来ならシェケル売りになる場面です。また、すでに大型投資を政策の柱としていたバイデン政権の発足が見込まれたタイミングでもあり、米長期金利の上昇を手がかりにドル高が進んでいました。にもかかわらずシェケルはドルに対して強含み、最高値圏に上昇しました。 その背景として国内総生産(GDP)が2020年4-6月期に前期比年率-20%台だったのに対し、7-9月期には+30%超と急激に改善したことが挙げられます。加えて、イギリスとアメリカに続き、イスラエルでワクチン接種がスタートしたことも市場は材料視。「ワクチン接種の進展=早期正常化」の見通しからイスラエルは株高・通貨高に振れ、イスラエルの中央銀行は一段のシェケル高を為替介入で抑制したぐらいです。 しかし、その後のシェケルはさえない値動きに終始しています。5月にはイスラム原理主義組織ハマスとの対立で3.29シェケル付近まで下落した後、停戦発効により軍事衝突の終息を好感した買い戻しが入りました。ただ、イスラエルのGDPは10-12月期に再び失速し、今年1-3月期はマイナスに逆戻り。通算15年におよぶネタニヤフ政権は経済の持続的な回復に失敗し、とうとう退陣に追い込まれました。 後を継ぐベネット政権は、イスラエル建国史上初めてアラブ系(パレスチナ人)政党が参画すると話題になっています。ただ、汚職疑惑の反ネタニヤフで一致したものの、左派や中道、極右の寄り合い所帯のような連立政権で政策的な共通点は見当たりません。そうなると経済の立て直しも困難で、政治情勢は早晩、再び不安定化するとみた方が自然です。シェケルは当面買いづらい地合いとみます。 一方、イスラエルと敵対関係にあるイランは6月の大統領選で、反米で保守強硬路線のイスラム法学者、ライシ師が圧勝しました。ライシ師は8月の就任に向け、早くもアメリカに対し安易な妥協を否定。イスラエルとイランは今後、緊張状態が高まると予想されます。ただ、アメリカのバイデン政権はイランとの対話を模索しているもようで、イスラエルへの後方支援はトランプ政権ほど盤石ではありあません。 イスラエルは国内の政治や経済、外交などでリスクが増しており、シェケルの長期的下落は避けられないとみます。国家の浮沈の決め手は、ワクチンだけではなさそうです。 (吉池 威) ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 《YN》