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もみ合うイラン通貨リヤル【フィスコ・コラム】

2021/5/30 9:00 FISCO
*09:00JST もみ合うイラン通貨リヤル【フィスコ・コラム】 イラン通貨リヤルの値動きに不透明感が増しています。任期満了に伴う大統領選が始まり、欧米との対話路線に否定的な保守強硬派が政権を奪還する可能性があるためです。選挙結果は中東発の地政学リスクにつながりかねず、外為市場でも注目が高まりそうです。 リヤルの公式レートは1ドル=42000リヤルですが、地元メディアなどによると、直近の闇レートでは267000リヤルと6分の1程度で推移しています。2018年に米トランプ前政権の対イランへの制裁再開を受け、経済の低迷を懸念した売りで急落。2019年には短期的に上昇したものの、その後はガソリン価格値上げをきっかけとした社会情勢の混乱により、同11月には再び下落基調に振れました。 2020年に入ると、新型コロナウイルスのまん延でリヤル安に拍車がかかり、150000リヤルからさらに値を下げます。10月には一時319000リヤルまで落ち込んだ後、それを大底に反転しました。米バイデン政権の発足で、対米関係の悪化を回避したとの見方が背景にあります。現在は240000-270000リヤルまで持ち直したものの、6月18日投開票のイラン大統領選を控え買い戻しは限定的です。 イランは中東の新型コロナ感染源とみられており、今年4月末には感染による1日当たりの死者が過去最多を記録しています。今後も感染拡大に手を打てなければ海外からの投資が一段と縮小しそうです。半面、米バイデン政権が今後イランへの制裁を解除した場合、同国の2022年の成長率は4%超と試算されています。その際にはリヤル安が大きく是正されるかもしれません。 そのため、大統領選の結果はイラン経済を大きく左右する材料になります。現在のロウハニ師のような保守穏健派なら制裁解除が進み、恩恵を受けるでしょう。逆に反欧米の保守強硬派が勝利すれば、中東の勢力地図が塗り替えられる可能性もあります。バイデン政権と距離を置き始めたサウジアラビアは5年前に国交を断絶したイランに接近しており、中東・アラブの結束といったシナリオも想定されます。 今回の大統領選の候補者には、前回2017年にロウハニ師に敗れた保守強硬派重鎮のライシ司法府代表や国際協調路線のメフルアリザデ元副大統領が選ばれました。保守強硬派はライシ師に支持を一本化したのに対し、穏健派は期待されたザリフ外相が出馬を見送りました。イランが事実上、中東と欧米のどちらに歩み寄るか方向を決める選挙で、現時点では反欧米の強硬派が有利とされています。 仮に保守強硬派の政権が発足した場合には、アメリカを後ろ盾に持つイスラエルとの一段の緊張も懸念されます。イスラエルはパレスチナとの衝突や国内政治の混乱で、急速に不安定化。宿敵イランとの対決姿勢を強めれば、原油価格の急騰をきっかけにトリプル安といった事態も想定され、その行方は今後の大きな手がかりとして注視されます。先行きが見通せないなか、当面はリヤルのもみ合いが続きそうです。 ※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。 (吉池 威) 《YN》