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『実業之日本』と地政学(2):日本に求められる「技術革新」と「リーダーシップ」(2)【実業之日本フォーラム】

2021/5/1 19:06 FISCO
*19:06JST 『実業之日本』と地政学(2):日本に求められる「技術革新」と「リーダーシップ」(2)【実業之日本フォーラム】 ポストコロナ時代の日本の針路 「国力・国富・国益」の構造から見た日本の生存戦略(2021/3/16) ■ゲスト 船橋洋一(実業之日本フォーラム編集顧問、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、元朝日新聞社主筆) ■聞き手 白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家) 『実業之日本』と地政学(2):日本に求められる「技術革新」と「リーダーシップ」(1)からの続き 白井:かつての『実業之日本』では、国力増進論などの経済重視姿勢が展開されましたが、結果的には、第二次世界大戦に負け、アメリカの庇護のもとに経済中心の世界に変わることになりました。何とも皮肉な結果のように思います。日本はこれから自らのビジョンを立てて未来を実装していくことができるのでしょうか。それとも敗戦のような外圧を待つしかないのでしょうか。 船橋:いつの時代も外圧は必要です。「ガイアツ」という言葉がない時代から、それは憧れであり、必要でもあり、切羽詰まったコンティンジェンシー(緊急事態対応)でもありました。外のすぐれたものをどう吸引、吸収するかによって、文明も発展します。日本は古代から世界の文物を摂取し、自らの文明・文化を耕してきた。「ガイアツ」をうまく使ってきた国だと思います。 「ガイアツ」をうまく使うコツは、自分たちのために良いことは取り入れ、駄目なものは排除する取捨選択とメリハリだと思います。日本は中国から多くの文物を学んできましたが、宦官の制度や纏足の習慣は排除しました。我々の祖先は、正しい取捨選択をしてきたのです。世界に生まれる先端的事物や取り組みへの強い関心とそこから学ぼうとする意志がなければ、どの国も発展はないし、世界に後れを取ってしまう。 明治以後は、日本はヨーロッパとアメリカから多くを学んできました。戦争に負けてからは、アメリカモデルに大きく依拠して、出直しを図りました。ガットの加盟国になってからは、ケネディラウンド、東京ラウンド、ウルグアイラウンドなどの多角的貿易自由化交渉の参画し、日本の市場やルールの改革と開放を進め、構造改革に取り組んできました。毎回、農業や製造業から猛烈な政治的圧力を受けましたが、「ガイアツ」を使い、国内の改革と開放を求める「ナイアツ(内圧)」とうまくつなぎ合わせて、業界の新陳代謝を進め、生産性を向上させてきました。「ガイアツ」はその意味で日本の“リープフログ(蛙飛び)”戦略でもあったのです。 しかし、1994年にウルグアイラウンドが終わり、その後のドーハラウンドが不発に終わり、20年以上にわたり、日本は多角的な貿易自由化を迫られることがありませんでした。ようやく2015年になって、TPPを締結することができた。市場開放、ルール形成ともにグレードの高い多角的貿易自由化の枠組みです。ただ、トランプ政権になって、肝心のアメリカが撤退してしまったというわけです。 これまでのように欧米先進国からの「ガイアツ」を使って、構造改革を進めるやり方だけではうまくいかない状況になっています。そもそも、欧米とも、とくにアメリカはトランプ・ポピュリズムと社会の大分断によって世界のモデルとしての役割を自ら放棄してしまったも同然です。議会占拠事件に象徴的に示されるように民主主義の機能も痛んでいます。米国の威信、影響力、信頼性のすべてに疑問符が付き始めています。アメリカから学ぶものはまだまだ多いと思いますが、これまでのような直輸入的学習は難しくなるでしょう。 これからは、アジアから学ぶことも多くなるでしょう。デジタル・トランスフォーメーションの面では、中国、インド、シンガポールなどが先進化しているところもあります。新型コロナ危機を乗り切る上でも、東アジアの国々の経験から学ぶところもあるはずです。シンガポール国立大学やオーストラリア国立大学など高等教育の面でも、イノベーションや多様性やグローバルに活躍できる人材の養成など、学ぶところがあると思います。 参考文献:船橋洋一著『地経学とは何か』、 『検証 日本の「失われた20年」』、 馬田隆明著『未来を実装する』 本文敬称略 ■実業之日本フォーラムの3大特色 実業之日本フォーラム( https://jitsunichi-forum.jp/ )では、以下の編集方針でサイト運営を進めてまいります。 1)「国益」を考える言論・研究プラットフォーム ・時代を動かすのは「志」、メディア企業の原点に回帰する ・国力・国富・国益という用語の基本的な定義づけを行う 2)地政学・地経学をバックボーンにしたメディア ・米中が織りなす新しい世界をストーリーとファクトで描く ・地政学・地経学の視点から日本を俯瞰的に捉える 3)「ほめる」メディア ・実業之日本社の創業者・増田義一の精神を受け継ぎ、事を成した人や新たな才能を世に紹介し、バックアップする 《TN》