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オンコリス Research Memo(4):テロメライシンは2023年に国内臨床試験結果を発表予定(2)

2023/3/27 16:54 FISCO
*16:54JST オンコリス Research Memo(4):テロメライシンは2023年に国内臨床試験結果を発表予定(2) ■開発パイプラインの動向 c) 食道がん(化学放射線療法との併用療法、米国) オンコリスバイオファーマ<4588>は2020年6月に米国の主要ながん研究グループであるNRGオンコロジーとの間で、食道がん患者を対象とした医師主導の第1相臨床試験を実施する契約を締結した。臨床試験の内容は、標準治療法であるCRT療法を行いながらテロメライシンを隔週に3回投与し、安全性の確認と3ヶ月後の腫瘍の縮小効果を確認するというもの。完全奏効率が標準治療法を上回れば(CRT療法単独で約50%程度)、企業治験で開発を進める可能性が出てくる。また、3年後のがん再発率が既存療法より低ければ、食道がんにおいて外科手術以外の標準治療法候補となる可能性もある。 予定症例数は12例だが新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)の影響で進捗は遅れており、2022年12月末時点で組入れは4例にとどまっている。これまでに安全性で問題となるような副作用は報告されていない。同社では今後、治験施設を増やしながら予定症例数の早期組入れ完了を目指していく。食道がんでは既にオーファンドラッグ指定を受けているため同指定の下で同治験が実施されており、補助金の支給や臨床試験費用の税額控除の優遇を受けることが可能となっている。 同社は今回の臨床試験の結果について、国内で今後進める予定の適応拡大(CRTとの併用療法)のための臨床試験データとして援用することを考えている。データを援用することで後期第2相/3相臨床試験から開始できることになり、開発期間の短縮につながる可能性があるためだ。ただ、適応拡大のための臨床試験は予定症例数も多くなることが想定されるため、開発資金を分担する共同開発パートナーが必要で、今後国内で販売パートナー契約を結ぶ企業の意向次第となる。いずれにしても、米国での第1相臨床試験の結果が注目される。 d) 進行性または転移性固形がん(免疫チェックポイント阻害剤との併用療法、日本) 食道がんを中心とした進行性または転移性固形がんでステージ4の患者を対象に、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブとの併用療法による医師主導の第1相臨床試験が国立がん研究センター東病院等で実施され、2021年に22例の組入れを完了した。同治験はステージ4の患者に対する治療戦略として、テロメライシンによる局所療法で腫瘍を縮小させ、患者のQOLを高めることでペムブロリズマブの治療効果をさらに高め、患者の生存期間を延伸することが可能かどうかを確認する試験であった。 前半の9例に関する中間報告については、2019年3月に開催されたAACR(米国癌学会)で発表されている。投与を制限するような重篤な副作用は発生せず、副次評価項目である有効性評価として、9例中3例で全身での部分奏効(PR)が確認されたというもので、ペムブロリズマブの単独療法による臨床試験結果(PR率13.1%)と比較して、腫瘍縮小効果が期待できる内容であった。また、後半の11例の試験結果も含めた全体総括については、2023年4月に開催されるAACRで発表される。治験担当医師からは「独自のバイオマーカーが見えてきた」という中間報告を受けており、その内容が注目される。 e) 口腔がん(熊本大学との共同研究) 2022年11月に同社は熊本大学と共同で「治療抵抗性口腔がんに対する放射線併用療法によるテロメライシンの有効性」に関する研究成果について発表した。概要は、テロメライシンと放射線併用療法により放射線耐性口腔がん細胞の放射線抵抗性を解除できることが明らかとなり、また、動物モデルにおいて放射線療法単独との比較で優れた治療効果が確認されたといった内容である。同研究によって今後、難治性口腔がんを対象としたテロメライシンと放射線併用療法による臨床開発が進むものと期待される。当面は熊本大学にて医師主導の臨床研究を継続し、エビデンスを積み上げる方針だ。 f) 頭頸部がん(免疫チェックポイント阻害剤/放射線との併用療法、米国) 同社は2020年8月にコーネル大学医学部らを中心とする研究グループと、頭頸部がん患者(手術不能・再発または進行性頭頸部がん)を対象とした医師主導の第2相臨床試験を実施する契約を締結した。第1例目の症例が完全奏功を達成するなど良好な結果を得られていたが、頭頚部がんの治療指針が免疫チェックポイント阻害剤を中心とした治療法に変化したため、現在試験を進めている併用療法で開発を続けていくことは困難と判断し、一旦組入れを終了した。 g) 肝細胞がん(免疫チェックポイント阻害剤、分子標的薬との併用療法、日本) 中外製薬において肝細胞がん患者を対象に、アテゾリズマブ及び分子標的薬ベバシズマブとの併用療法による第1相臨床試験が2021年1月より開始されたが、ライセンス契約の解消に伴い両社協議のうえ、2022年10月で同試験を終了した。ただ、肝細胞がんに関しては2014年から2020年にかけて台湾・韓国で提携先のメディジェンと共同で単剤による第1相臨床試験を実施しており、評価可能な18例において安全性が確認されている。また、18例のうち3例で部分奏功が確認されたほか、8割は投与後の腫瘍体積が変化しないといった結果が得られるなど一定の有効性も確認できていることから、新たなライセンス先が決まればライセンス先にて併用療法による開発を進めていく可能性はある。 h) 中国市場での取り組みについて 食道がんの世界患者数は2020年の約60.4万人から2040年には1.6倍の約98.7万人に増加すると予測されている。なかでもアジア市場が約8割と最も大きく、国別では中国が最大市場となる。このため、同社にとって中国市場は重要戦略市場との位置づけであり、中国企業との交渉を適宜進めている模様だ。現時点では、国内で販売承認を取得して製品価値を高めたうえで導出することを基本方針に据えており、2024年以降に契約交渉を本格的に進めるものと予想される。 (4) 製造体制 同社はテロメライシンの製造体制の充実、製造拠点の分散によるリスク軽減などを目的に、商業用製品の製造委託先として新たにベルギーのHenogen SA(以下、ヘノジェン)と2021年に提携し、米Lonza Houston, Inc.(ロンザ)との2社供給体制を構築した。ヘノジェンでの製造工程はほぼ固まり、現在GMP製造に移行している。問題がなければ2023年下期にも商用製造に近いところまで進む見通しで、2025年の販売段階では十分な供給体制が構築されているものと考えられる。なお、商業用についてはヘノジェンで量産していくことになるが、将来的に販売量が増加することになれば、新たな製造拠点を確保しサプライチェーンリスクに対応していく必要があると同社は考えている。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲) 《NS》
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時価総額 16,044百万円
新規抗がん剤「テロメライシン」の開発を行う創薬バイオ企業。HIV治療薬やウイルス感染症治療薬、神経難病治療薬の開発等も。富士フイルム富山化学と販売提携契約締結。テロメライシンに経営リソースを集中。 記:2024/07/08