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澁澤倉庫 Research Memo(9):中期経営計画後は、生じた海外展開と投資の課題を解消へ

2020/6/25 18:09 FISCO
*18:09JST 澁澤倉庫 Research Memo(9):中期経営計画後は、生じた海外展開と投資の課題を解消へ ■澁澤倉庫<9304>の中期経営計画 1. 中期経営計画「Step Up 2019」の振り返り 2020年3月期が最終年度となった中期経営計画「Step Up 2019」は、数値目標が営業収益67,000百万円、営業利益4,000百万円、経常利益4,000百万円だった。したがって、わずかながら未達となったということになる。ただし、想定外の新型コロナウイルスの影響のなかで未達の額が極めて小さかったことを考えれば、実質的にはほぼ達成したと見たほうがよいだろう。また、営業利益が表面上未達になった一方で、経常利益は名実ともに目標の4,000百万円を超過した。これは景気良化により金融収支が改善したためである。 ところで「Step Up 2019」では、特色ある物流企業としての地位を固めることで企業価値の向上を目指した。そのための重点施策は、国内事業では消費財物流の拡充と流通加工などの高付加価値業務の拡大、海外物流では中長期成長に向けた事業基盤の強化、不動産事業は賃貸用不動産の資産価値向上と収益基盤強化、そして経営基盤強化に向けた公正性・透明性・機動性の高い経営の実現——である。そして、基点となる2017年3月期で、2020年3月期に国内物流で6,000百万円、海外で3,000百万円の増収を狙ったが、結果、国内物流で約7,500百万円、海外で約1,000百万円の増収となり、国内は目標を大きく超えたが海外は届かなかった。 国内物流の目標を大きく押し上げたのが消費財物流の伸長で、その主因が、新規拠点の増加により営業倉庫面積が2017年3月期比1.3倍となったことである。こうした、特に首都圏を中心とした拠点の新設・拡充は、取扱量の増加だけでなく、作業者の労務管理や過不足調整、季節性の強い飲料の在庫調整などの面で、エリア集中によるドミナント効果(拠点間の連携強化で効率性が向上する効果)が発揮されたと考えられる。さらに、飲料や日用品の伸びにより各倉庫がフル稼働状態となる一方、消費税増税を前に在庫を備蓄したいメーカーのニーズにも機動的に対処することができた。 高付加価値業務の拡大も収益を押し上げた。「Step Up 2019」で最大のプロジェクトだった横浜恵比須町再開発第2期が「Step Up 2019」の期間内に完成、松戸などで多品種少量の輸入雑貨の取扱いが拡大、検品や詰替えといった流通加工業務も広がった。一方、国際物流では、ベトナムでのフォワーディング貨物や国際一貫輸送の取り扱いが増加したが、特にフィリピンでの事業の進展が遅れているもようである。なお、不動産事業では、計画的な保守・修繕や機能向上及びビルマネジメントサービスの高品質化を背景に施設がフル稼働、賃料収入の増加により基盤強化が進んだ。 海外と高付加価値化で課題解消へ 2. 「Step Up 2019」後の中期成長イメージ 「Step Up 2019」に続く新中期経営計画の発表が、新型コロナウイルスの影響で延期された。延期自体は、目標数値を固めるうえでボラティリティが大きくなったため仕方ないと考えるが、定性的には、成長戦略とともに「Step Up 2019」で生じた課題の解消が中期経営計画のターゲットとなると考える。 海外物流のフィリピン現地法人の業容拡大が最大の課題と言える。同社は新型コロナウイルスの影響で遅れていた現地営業を改めて強化する方針である。日本とフィリピンと地盤のあるベトナムを3極に東南アジアで日系企業のみならず現地企業へも業容を拡大していく意向である。国内では、高付加価値化や高付加価値化によるドメイン拡大を背景に、新サービスの開発も強化していくことが課題となるだろう。EC向け在庫・受発注管理やサイトの作成、薬事管理など顧客管理業務の代行、イベント設営、内装のレイアウト作成と工事、非営利機関へのサービス提供、TMS動態管理・輸出入管理などシステム機能や情報処理サービスの提供——などである。さらに今後新たに課題になることとして、AI(人工知能)やAP(人工視覚)、IoT(モノのインターネット接続)を利用した自動運転や自動倉庫の活用もある。まだ先の話かもしれないが、こうした将来の可能性に足元で布石を打つことも必要と考える。 ちなみに、「Step Up 2019」の期間中に最大総額20,000百万円の投資を考えていたが、3年間で10,797百万円にとどまった。横浜恵比須町再開発計画以外は戦略投資としてやや小粒であり、次期中期経営計画への積み残しとも考えられる。したがって、次期中期経営計画における投資は、首都圏・関西圏の都市部内陸の拠点の新設・拡充に加え、課題と思われる海外、高付加価値化に向けて投下されることになると予想する。もちろんM&Aも視野に入ってくることだろう。いずれにしろ、総合物流企業として中長期的に成長していくための重要な投資となると思われ、こうした投資を着実にこなすことで、次期中期経営計画で再び成長トレンドに入ることは可能と考える。 (執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光) 《EY》
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1897年創業の総合物流企業。渋沢栄一が創業者。倉庫業務、陸上運送業務、国際輸送業務、港湾運送業務等を手掛ける。オフィスビル賃貸等の不動産事業も。物流事業の収益力強化図る。27.3期営業利益53億円目標。 記:2024/10/07